整骨院・接骨院で保険料金表を作成する際に注意すべきポイントとは?

【整骨院・接骨院向け】保険料金表の作成で注意すべきポイントとは?

整骨院や接骨院で保険施術を受けた患者さんに対して窓口の負担金を請求する場合、料金表を作成しておくと便利です。

保険料金表を作成するためには、まずは療養費の算定基準に基づいて、部位数に応じた療養費を計算する必要があります。さらに負担割合に応じて、患者さんの一部負担金を表にまとめると、それを保険料金表として利用できます。

本記事では、整骨院・接骨院の保険料金表を作成する方法や、自費メニューを導入する際の料金設定について注意するべきポイントを紹介します。

料金についてトラブルを起こさないようにしたい場合は、本記事を参考にして料金表を作ってみてください。

整骨院・接骨院の保険料金表を作成する前に知っておくべきこと

まずは整骨院・接骨院の料金表を作成する際に、知っておくべきことについて簡潔に紹介します。

償還払いと受領委任払い

柔道整復師の保険システムは償還払いを受領委任払いでカバーすることで成り立っています。

償還払いとは患者さんが施術費の全額を整骨院や接骨院の窓口で支払い、その後、健康保険組合に申請して自己負担分の払い戻しを受けることです。しかし償還払いが採用されると、一旦は患者さんが全額を負担するため経済的な負担が生じます。また払い戻しを受けるためには、手続きの時間や手間を要するため、整骨院や接骨院を利用しづらくなります。

そこで受領委任払いと呼ばれるシステムが考え出されました。この制度を利用すると、患者さんは整骨院や接骨院の窓口で1割~3割の一部負担金を支払えば、施術を受けられます。受領委任払いによって、柔道整復師が患者さんに代わって払い戻し分の料金を保険者に請求できるようになったのです。

つまり患者さん側からすると、クリニックや病院などの医療機関と同じように保険を使って、整骨院や接骨院で施術を受けられることになります。

柔道整復師が受領委任払いを導入する場合、地方(支)局長および都道府県知事と協定を結ぶ必要があります。

保険を適用できる症状

柔道整復師が保険を適用して施術できる症状は急性症状に限られています。つまり骨折や脱臼、打撲、捻挫、挫傷のみに保険を適用して施術ができることが決められているのです。ただし骨折や脱臼については、応急処置を除き施術をする場合に医師の同意を得る必要があります。

また慢性症状に対しては施術できないため、慢性腰痛や肩こり、加齢による関節症などに対しては保険を適用して施術はできません。

保険適用の範囲に対して施術を行い、保険者に施術料を請求すると法律違反になるため注意しましょう。

保険施術の一部負担金

患者さんが施術を受けた場合、保険施術の一部負担金について決められた金額を窓口で支払ってもらう必要があります。

柔道整復師の療養費は毎年、社会保障審議会で話し合われ改定が加えられます。それにともない一部負担金も変化するので、しっかりとチェックすることが大切です。療養費から一部負担金を計算する場合、患者から徴収する額とレセプトに記載する額の計算方法が異なります。

患者に請求する一部負担金については、一の位の端数が生じた場合は四捨五入をして、10円単位で請求します。

一方でレセプトに記載する場合は、1円未満の金額を四捨五入して、1円単位で記入します。

たとえば負担割合が3割の人の療養費が4755円だった場合、次のように計算します。

  • 一部負担金の計算:4755円×0.3=1426.5円
  • 患者さんが支払う窓口料金:1430円
  • レセプトに記入する一部負担金の金額:1427円

記入に誤りがあると、レセプトが返戻されることがあります。レセプトの返戻に関する詳細については、次の記事でも解説しています。

参考:レセプトが返戻されてしまう理由とは?返戻理由と対策、再請求について徹底解説します!

整骨院・接骨院の保険料金表の作成方法

保険料の計算をする様子

整骨院・接骨院の保険料金表が必要な場合は、前項で解説した要領で療養費から一部負担金を計算して、それを表にまとめると作成できます。

部位数によって料金が変わるので、1~3部位の項目で分け、さらに1割~3割ごとの料金を表にして記載すると患者さんに伝わりやすくなるでしょう。

整骨院や接骨院には、保険請求を請け負ってもらえる複数の団体があります。いずれかの団体に加入すると、一部負担金の早見表をもらえることもあります。正確な料金表を作るために早見表が必要な場合は問い合わせると良いでしょう。

整骨院・接骨院の保険料金表における注意点

注意を促す写真イメージ

整骨院・接骨院で保険料金表を作成したあと、実際に窓口で一部負担金を請求することになります。窓口で一部負担金をもらう際には次の点に注意しましょう。

・値引きや割増ができない

・施術時間の長短で料金を決められない

・材料費を徴収できない

それぞれについて解説します。

値引きや割増ができない

一部負担金を決められた額よりも多めに請求したり、減らして請求したりすることはできないため注意しましょう。

たとえば知り合いの患者さんが来院した際に、サービスで値下げしたり、キャンペーンとして値引きしたりはできません。

必ず決められた額を請求するようにしてください。

施術時間の長短で料金を決められない

一部負担金は施術時間が長くても短くても同じ料金を請求する必要があります。たとえば、施術をしていて筋肉をほぐす時間が通常よりも長くなったからといって、延長料金を請求することはできないので注意しましょう。

材料費を徴収できない

療養費には施術以外の包帯やシップなどの材料費も含まれています。保険施術を行った部位に対しては、材料費として一部負担金に割増して患者さんに請求できないため注意しましょう。

整骨院・接骨院で自費メニューの料金表を設定する際のポイント

整骨院・接骨院では、自費メニューを導入して保険施術以外のサービスを提供することができます。しかし保険施術メインの整骨院や接骨院が自費メニューを導入すると、料金についてトラブルやクレームにつながるケースがあります。また自費メニューを導入したことで、経営を圧迫することもあります。

それらを避けるためにも、次のポイントを理解して自費メニューを導入したり、料金表を設定したりしましょう。

  • 保険施術と自費メニューの違いを明確にすること
  • 施術料金を急に変更しないこと
  • 投資の回収には時間を要すること

各項目について詳しく解説します。

保険施術と自費メニューの違いを明確にすること

保険施術と自費メニューの違いを明確に示さないと、保険施術を受けにきた人が誤って自費メニューを受けてしまうかもしれません。保険施術で安価に済ませるつもりだった患者さんにとっては、予想以上に高額を請求されるため、料金に対するクレームにつながる可能性があります。

保険施術と自費メニューの違いが分かるような料金表を作成したり、事前に違いを説明したりすることが大切です。

施術料金を急に変更しないこと

自費メニューをすぐに導入したり、自費メニューの売り上げをアップさせるために価格を上げたりするのはやめましょう。勉強会やセミナーに行くと、すぐにでも教わった自費メニューを導入したくなりますが、慎重になることが大切です。

自費メニューの高額な料金表を急に整骨院内に掲示すると、今まで保険で安価に通っていた患者さんにネガティブな印象を与えてしまい、整骨院離れにつながる可能性があります。

3か月程度を目安に事前告知の時間を設けて、自費メニューを導入することを少しずつ患者さんに理解してもらった上で、導入する方が患者離れを防げます。

投資の回収には時間を要すること

整骨院や接骨院で自費メニューを展開するにあたり、高額な費用がかかるケースもあります。投資した金額をすぐに回収できればいいのですが、回収までに時間がかかることが多いです。

たとえば新しい機械を導入しようとしたり、鍼灸を導入しようと養成学校に通って資格を取得したりすると、それで数十万~数百万円の費用がかかります。手持ちの資金で賄えない場合は、銀行からの借り入れを検討することもあるでしょう。

借り入れた場合は、毎月の支払いが発生するため、経費負担が大きくなり、経営が苦しくなる可能性があります。

自費メニューの導入で高額な費用がかかる場合は、費用を回収するまでに時間を要することを理解して、計画的に借り入れしましょう。

参考:整骨院・接骨院で自費施術に移行したい!メリット・デメリットや注意点を徹底解説

保険施術・自費メニューともに領収書発行が義務

領収書を記載する様子

厚生労働省の「柔道整復師の施術に係る療養費について」によると、柔道整復師の施術において、平成23年(2011年)9月1日以降から、療養費の一部負担金の徴収する際は領収書を無償で交付するように義務化されました。

書式も定められていて、保険施術の合計金額を記載した上、一部負担金と自費メニュー(保険外施術)の金額を記載して内訳が分かるようにしなければなりません。また、一部負担金と自費メニュー(保険外施術)の金額を合わせた合計金額を最後に記載することになっています。

整骨院や接骨院で発行する領収書については、次の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

参考:整骨院・接骨院では領収書を発行すべき?テンプレートや書き方を紹介!

接骨院・整骨院で保険施術を行う際は適切に料金表を作成しよう

整骨院・接骨院で扱う保険システムは、償還払いを受領委任払いでカバーして患者にかかる負担を軽減することで成り立っています。療養費から一部負担金を計算して、それを表にまとめると保険の料金表を作成できます。

保険の料金表を作成したら、値引きや割増をすることなくすべての患者に対して料金表通りの金額を請求しましょう。

また自費メニュー導入する際は保険施術の違いが、料金表を見ると明確に分かるようにすることが大切です。また保険施術で対応可能な症状も限られるため、事前に説明をした方が料金に関するトラブルを避けられます。

<参照元>

1)厚生労働省 | 就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所
2)厚生労働省 | 柔道整復、はり・きゅう、マッサージ、治療用装具に係る療養費の推移(推計)

3)近畿厚生局 | 柔道整復師の施術に係る算定基準の実施上の留意事項
4)近畿厚生局 | 柔道整復師の施術に係る療養費について
5)厚生労働g同省 | 柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて
6)接骨ネット | 接骨院の料金と保険適用される施術

7)全国柔整鍼灸協同組合 | 接骨院の窓口料金の設定はどのように決めればいい?


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