整骨院・整体院で柔道整復師が行う施術の一部には健康保険が適用されます。
しかし、厚生労働省の方針により、整骨院・接骨院からの保険請求に関する審査が年々厳しくなり続けているのが現状です。
一体なぜ、整骨院・接骨院で受ける施術に健康保険が使いにくくなっているのでしょうか?
そこで今回は、整骨院・接骨院で健康保険を使っての診療が厳しく審査されるようになった理由や、健康保険のみに頼らない経営方法について解説していきます。
保険診療ができる・できない症状
まずはじめに、整骨院・接骨院で保険診療ができる・できない症状について解説します。
保険診療ができる症状
柔道整復師が施術を行う整骨院・接骨院も、骨折・挫傷・脱臼・打撲・捻挫の治療に限っては、健康保険が適用になります。ただし、骨折と脱臼の施術をする場合は緊急の場合を除いて医師の同意が必要です。
保険診療ができない症状
整骨院では、骨折・挫傷・脱臼・打撲・捻挫といったケガの施術を目的とした施術以外にも、以下のような症状の改善を目的とした施術を受けることができます。
- 腰痛
- 肩こり
- 首のこり
- 身体の節々の痛み
- ケガのリハビリ
しかし、これらの施術には健康保険を使うことができません。
柔道整復療養費は減少傾向にある
柔道整復療養費とは、柔道整復師が行った施術にかかった費用のうち、健康保険が適用になった額のことです。柔道整復師の行う施術は厳密に言うと「治療」に含まれないので、療養と言い表します。厚生労働省の発表によると、整骨院に健康保険から支払いが行われたことを示す「柔道整復療養費」は、平成23年度をピークに減少しています。
これは、整骨院への指導や監査が強化されたことも一因でしょう。これからも、柔道整復療養費の適応条件は不正対策の名目でより狭まる可能性もあります。
整骨院・接骨院では自費メニューの導入が必須
前述したように、整骨院・接骨院で健康保険適用になる施術や治療は、これから少なくなっていく可能性が高いでしょう。
施術を受ける人の負担が増えれば、気軽に整骨院を受診しようという人は減るかもしれません。
そこで、減少が予想される患者を獲得するために、自費メニューを導入することについて解説します。
自費メニューの導入が必要となっている背景
前述したように、柔道整復療養費は年々減少傾向にあります。さらにはライバル店に打ち勝ち生き残るには、自費メニューを導入し、顧客により良い施術を提供して他の整骨院・接骨院との差別化を図ることが大切です。
「この施術はここでしか受けられず、しかも効果がある」と患者さんが理解されれば、ライバル店と差が付けられます。
自費ニューの種類
自費メニューと一口に言ってもその種類はさまざまです。整骨院・接骨院で取り入れられている自費メニューの主なものには、以下のようなものがあります。
運動療法
腰痛や肩こりの予防、ダイエット、ケガや病気のリハビリなどを目的とした療法です。柔道整復師の知識を活用し、正しい身体の動かし方や運動のメニューなどの指導を行います。
骨盤矯正
出産や生活習慣でずれてしまった骨盤を矯正する施術は、女性に人気があります。柔道整復師の知識や経験を活かして手技をするだけでなく、運動のメニューを提案したり生活に関するアドバイスをしたりすることも可能です。
物理療法
物理療法とは、電気治療など器具を使って直接患者の身体に働きかける治療方法の総称です。器具の導入費は必要ですが、使用するのに特別な資格などは必要ないため多くの整骨院で導入されています。
マッサージ
マッサージもライバル店が多いので、ターゲットを定めることが大切です。例えば、リンパの流れを正常に戻すマッサージなどを導入すると、むくみなどに悩まされている人を顧客として獲得しやすくなります。
鍼灸
鍼灸は、鍼灸師の資格がないと行えませんが、柔道整復とは違ったアプローチで身体のこりや痛みを改善する施術ができます。柔道整復とあわせて行うことで、相乗効果も期待できるでしょう。また、美容鍼など美容効果が期待できる施術もあります。
保険適用がますます厳しくなっている整骨院や接骨院業界においては、自費メニューの導入が迫られています。実際に自費メニューの導入を検討している、整骨院・接骨院の経営者も多いのではないでしょうか?
とはいえいざ自費メニューを導入しようとして[…]
自費メニュー導入までの流れ
自費メニュー導入までには以下のような流れが必要です。
1.自店が導入できる、または顧客のニーズが高そうな自費メニューを調査する
2.自費メニューを導入するのに必要な機材や資格を調べる
3.機材を購入したり資格を取得したりした上で、どのくらいの価格で自費メニューを提供できるか考える
4.現在の顧客や新規顧客になりそうな人に、自費メニューのプロモーションをして反応を見る
5.資格を取得したり機材の導入をしたりして、自費メニューの提供を開始する
ここまで、早くても2~3か月はかかるでしょう。一朝一夕でできること出ないので、自費メニューを導入すると決めたら早めに動くことが大切です。
自費メニュー導入の注意点
自費メニューの導入はメリットもあればデメリットもあります。この項では、自費メニューを導入する際、注意すべきことを解説しましょう。
機材の購入費の回収までには時間がかかる
自費メニューに機材が必要となることも多いのですが、医療機器は高価です。
一例を挙げると、電気刺激によって筋肉を動かし負荷をかけることで部分的なトレーニングができる、「EMS」という機械は、購入すると50万~100万円の費用がかかります。
現在はレンタルもありますが、最低でも月に1万円はかかります。そのため、購入費の回収までには時間がかかると考えましょう。利益が出るまで顧客を確保し続けることが大切です。
資格の取得にはお金や時間がかかる
自費メニューの中には、行うのに資格が必要なものがあります。代表的なのは「鍼灸」です。鍼灸師の資格がなければ行えません。
また、マッサージなども多数の民間資格があり、取得することで技術力が上がったり技術を客観的証明できたりします。例えば、リンパ浮腫療法士の資格は柔道整復師の資格を持っていれば、2年以上の実務経験を経て研修を終了すれば取得可能です。
しかし、資格を取得するには時間と費用がかかります。自分が取得するまで自費メニューの導入が待てない場合は、有資格者を雇うことも検討しましょう。
急な価格変更は既存顧客が離脱する可能性がある
自費メニューは付加価値があり、費用がかかることを顧客に納得してもらいやすいものです。しかし、急に自費メニュー導入を理由に価格変更をすれば、既存顧客が離脱してしまう可能性もあります。
自費メニュー導入に伴い、今までの施術も価格変更をするならば、時間をかけて理由を説明し、顧客に納得してもらいましょう。
【整骨院・接骨院】保険に関するまとめ
今回は、整骨院・接骨院で保健が使えなくなると言われている理由や、整骨院・整骨院の生き残りのためには、自費メニューの導入が有効という点を解説しました。
整骨院や整体院で受けられる施術で、健康保険が適用になるものは限られています。これからもその範囲が狭まってくる可能性もあるでしょう。
顧客によりよい施術を提供し、ライバル店との競争に打ち勝つためには、自費メニューの導入をぜひ検討してみてください。
<参照元>
https://zeromedical-web.com/blog/health-insurance/
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/jyuudou/index.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/jyuudou/index.html
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/111116_01.pdf
https://www.e-shugi.jp/contents/k/092_20191025/
https://www.min-iren.gr.jp/?p=14702