整骨院・接骨院を開業するためには、それなりに経費がかかります。また現在は、競合が増えたこともあり、廃業に追い込まれるリスクがある点も不安です。
以前と比べて儲かりにくいとも言われるので、「実際に、整骨院・接骨院を開業して儲かるの?」と疑問を抱える人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、業界の変遷をもとに整骨院・接骨院が儲かるかどうかについて詳しく解説します。また儲ける方法や儲かる仕組み作りについても説明するので、ぜひ最後までご覧ください。
【業界の変遷】整骨院・接骨院は儲かるのか?
整骨院・接骨院をうまく経営すれば儲けることができます。しかし現在は、以前よりも儲けることが難しい職種となりました。
2000年頃までは誰でも利益を出しやすい職業でしたが、時代の変化とともに厳しくなっているのが現状です。厳しくなった原因は、柔道整復師の数が増えたことと、保険適用の適正化です。
ここでは、整骨院・接骨院の業界における時代の流れについて解説します。
整骨院・接骨院の経営者が儲かっていた1990年代
1990年代までは整骨院・接骨院を経営すれば、儲かると言われていました。この時代は1人の柔道整復師が対応する患者数が、1日に100人を超える場合もありました。
宣伝しなくても多くの患者が来院するので、整骨院の院長になれば、年収1000万円を稼ぐことは難しいことではなかったのです。
整骨院・接骨院が儲かりやすかったのは、その当時は整骨院・接骨院の数が少なかったことが要因のひとつと考えられます。下記の厚生労働省の資料によると、平成10年以前は柔道整復師の学校に入れる人が年間で1,000人くらいでした。
▼柔道整復師の養成施設の数と定員数
当時(平成10年)の専門学校数は14校で養成施設が少なく、柔道整復師の増加数も1年で1050名以内になるように規制されていました。そのため、柔道整復師の国家資格を取得する人が少なかったのです。
しかし平成11年(1998年)以降、規制緩和に伴い学校と柔道整復師の数が急激に増加しました。柔道整復師の数が増えると整骨院の数も増えるので、患者の奪い合いになり儲かりにくくなります。
そもそも専門学校の数が増えたのは、ある学校設立の希望者が平成10年に裁判を起こして勝訴したことがきっかけです。
この裁判以降、柔道整復師の養成施設の設立について規制が緩和され、急激に専門学校や大学の数が増えました。
整骨院・接骨院の経営が厳しくなった2000年以降
2000年以降も柔道整復師の数は増え続け、それに比例して整骨院・接骨院の数も急激に増加。競合が増えたことで、関西圏を中心に廃業ラッシュを迎える地域が見られるようになりました。
さらに保険適正化の流れで、保険からの収入が激減して廃業に追い込まれたり、悪質な請求を繰り返して柔道整復師の免許を取り消されたりする事例も目立つようになったのです。
2010年以降になると1人の柔道整復師が患者対応する数が、多くとも1日に40人程度となりました。1日に100人を施術した柔道整復師がいたことを考えると、大きな減少です。
以降も平成から令和にかけて、さらに整骨院・接骨院(柔道整復師)の療養費減少が進み、自費メニューに力を入れる施術所も現れました。
▼支給された療養費の推移
引用:柔道整復、はり・きゅう、マッサージ、治療用装具に係る療養費の推移(推計)|厚生労働省
療養費が増額される見込みがないため、整骨院で儲けようと思った場合、経営のポイントを押さえ、自費施術の導入に力を入れることが重要と考えられます。
整骨院・接骨院を経営して儲けるためのポイント
整骨院・接骨院を経営して儲けるためには、次のポイントを押さえることが大切です。
- 他店舗と差別化する
- 施術効果の再現性を高める
- 集客方法をに工夫する
それぞれのポイントについて解説します。
他店舗と差別化する
多くの競合が存在するなかで儲かる整骨院・接骨院を作りたい場合は、多店舗との差別化が欠かせません。
なぜなら同じ地域で同じようなサービスを提供する店舗が複数あると、サービスの利用者はそれぞれを比較するからです。
サービスを比較した上で、自分に合った整骨院・接骨院で施術を受けたいと考えます。そのため他店舗との差別化ができていないと、整骨院・接骨院の利用を検討している人に自院の魅力が伝わりません。
施術効果の再現性を高める
施術効果の再現性とは、同じ施術を行った場合に、同じような効果を得られることを指します。再現性が高いと、患者さんが施術に満足してリピートしやすくなるのです。
とくに複数のスタッフを抱えて整骨院・接骨院を運営する場合は、マニュアルを整備して誰が施術を行っても同じ効果を得られるように配慮する必要があります。
なぜなら、施術者ごとに施術内容や効果が違うと、患者からのクレームや離脱につながるからです。
さらに施術以外の再現性も重要で、整骨院・接骨院によってはトークスクリプトを準備して、問診やアフタフォローで施術者から語る内容を統一するケースも見られます。
特にアフターフォローを統一する際には、運動指導の内容をスタッフ間で標準化させることが欠かせません。
そのためにも、スタッフ全員が同じ内容で運動指導を行う必要があります。スタッフごとにアドバイスする運動療法が異なると、患者もどれが正しいのかわからず混乱してしまうでしょう。
スタッフ間で運動療法の内容を統一したい場合は、リハサクが提供する運動療法クラウドを利用するのもおすすめです。
理学療法士が考えた運動療法を動画で共有できるので、簡単にスタッフ間の運動指導の内容を統一できます。施術と一緒に運動療法クラウドを提供することで、施術効果の再現性を高める効果も期待できるでしょう。
運動療法クラウドについては、次のページで紹介しているので、ぜひご覧ください。
集客方法を工夫する
競合が多い状況で、整骨院・接骨院の売上を伸ばすためには、集客方法を工夫して自院を効果的にアピールすることが大切です。
現在はインターネットの普及により、以前よりも集客方法の幅が広がりました。インターネットを利用した集客方法として、次のような方法があるので、自院にあった方法を選んで集客を工夫するとよいでしょう。
- YouTubeやTickTockなどの動画を使って集客する方法
- InstagramやX(旧Twitter)などのSNSを利用した集客方法
- PPC広告にランディングページを出稿して集客する方法
- SEO対策を実施して自院のホームーページを検索結果に上位表示させて集客する方法
- MEO対策で自院のGoogleマップでの露出を増やして集客する方法
整骨院・接骨院経営で知っておくべき経費率
整骨院・接骨院の経営を成功させるためには、経費率を把握しておくことが大切です。経費率とは、売上に占める経費の割合を指し、経費率が低いと利益率も高くなるので、儲かりやすくなります。
整骨院・接骨院を経営して儲かりたい場合は、次の経費率を把握しておきましょう。
- 人件費率(40%前後)
- 家賃率(約10%)
- 広告費率(3~5%)
以上を合計して適正な接骨院・整骨院の利益率を考えると、30~40%です。それぞれの経費率について解説するので、参考にしてください。
人件費率
人件費率は売上に対する人件費の割合を指します。人件費には、労働者への報酬や手当として支払われる費用、採用コストが含まれており、整骨院・接骨院の場合は40%前後で設定されることが多いです。
家賃率
家賃比率は売上に対するテナント代や駐車場代が占める割合です。整骨院・接骨院の場合は、10%くらいに設定すると経営が安定しやすいと言われています。
広告費率
広告費率は、売上に対する広告費の比率です。広告費としてチラシ代やホームページ作成費、集客のために行ったイベントの開催費用などが考えられます。広告費率の目安は3~5%と言われています。
整骨院・接骨院を経営する柔道整復師の売上と年収
ここでは整骨院・接骨院を経営する柔道整復師の売上や年収を、保険請求額をもとに解説します。1人で運営した場合の売上と年収も紹介するので、参考にしてください。
整骨院・接骨院の保険施術における売上
日本柔道整復師会の広報誌によると、平成21年(2009年)の会員の年間療養費給付総額(健康保険の申請により給付される費用)は、1761億円でした。それが、令和3年(2021年)になると、953億円まで下がっています。
そして、施術所の件数が増えているため、1つの施術所当たりの給付額が下がり、平均で売上は年間500万円未満となっています。
これはあくまで保険施術の平均売上ですので、そこに自費施術の売上を足した金額が総売上です。
自費メニューについて詳しく知りたい場合は、次の記事をご覧ください。
参考:整骨院・接骨院の自費メニューの作り方!料金設定や回数券についても解説
1人で整骨院・接骨院を開業した場合の売上と年収
1人で整骨院・接骨院を開業すると人件費を低く抑えられるので、大きな利益率を期待できる点がメリットです。その反面、1人で患者に対応する必要があるため、あまり1日の患者数が少なくなるデメリットもあります。
そのため保険施術のみに頼ると、十分な売上と年収を上げることができない可能性があります。
昨今は自費施術を中心にして、1人の患者さんに多くの時間をかけて1人の患者当たりの単価を上げる整骨院・接骨院が増えてきました。
自費メニューを中心にして、1人当たりの施術単価を5,000円以上にすると年収1,000万円以上を目指せます。
施術単価が5,000円になると、1日に10人に対応すれば、1日の売上が5万円になります。5万円で22日以上営業(週休2日)すると、売上が110万円です。経費(家賃率10%、広告費率3~5%)を差し引いても90万円以上残るので、年収にすると1,000万円を超えます。
施術料5,000円以上の高単価で経営を成功させるためには、施術サービスの内容を充実させて、ある程度の数の患者に来てもらえるような仕組み作りが欠かせません。
整骨院・接骨院でこれから儲かる仕組みとは
整骨院・接骨院は今後、ヘルスケア産業の一翼を担う業界として、市場規模の拡大が予想されます。とくに運動関連のサービスに力を入れると、儲かる仕組みづくりの糸口が見いだせるかもしれません。
昨今流行している運動サービスの具体例として、ダイエットを目的としたフィットネスクラブやパーソナルトレーニングなどが挙げられます。
整骨院・接骨院が運動関連のサービスを提供する場合は、肩こりや腰痛の予防を目的とした運動指導を提供すると既存の患者にも受け入れてもらいやすいのではないでしょうか。
まとめ:整骨院・接骨院は今でも儲かる
以前の整骨院・接骨院は保険を適用した施術サービスを多くの患者さんに提供することで、儲かっていました。
しかし現在は、廃業に追い込まれる整骨院・接骨院も出てきたため、以前とのギャップで儲からないと感じるかもしれません。
しかし自費メニューを導入したり、アフターフォローに力を入れたりして以前とは違うサービスを提供することで、今でも儲かる仕組みを作ることは可能です。
実際にリハサクを使って運動指導をすることで、これまでに多くの柔道整復師が売上を伸ばしました。次のページでは具体的な事例を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
リハサク導入事例:https://rehasaku.net/interview
参考
1)柔道整復師専門学校の規制緩和について|アトラアカデミー
2)日本柔道整復師会 広報誌バックナンバー 2014年4月号(13頁)
3)日本柔道整復師会 広報誌バックナンバー 2023年4月号(14頁)