整骨院や接骨院では柔道整復師が施術を行う場合、急性症状に限り健康保険が適用されます。
昨今は保険適正化の影響で、急性症状の審査基準が以前よりも厳しくなりました。そのため「整骨院や接骨院では保険が使えなくなる?」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、整骨院や整骨院で保険が使えなくなるといわれる理由や、健康保険に依存しない経営方法について解説します。
整骨院・接骨院で保険が使えなくなるといわれる理由
整骨院や接骨院で保険を使えなくなるといわれる理由には、厚生労働省の規制強化と柔道整復師に支給される療養費の減少が関係しています。
厚生労働省が規制を強化しているから
柔道整復師の不正請求が相次いだことを受け、厚生労働省が規制を強化しています。主な規制の内容は次のとおりです。
- 長期施術継続理由書の添付:長期に渡って患者に施術をして療養費を請求する場合は理由書を添付する必要がある
- 多部位請求時の給付率低減:3部位目の給付金額が通常よりも60%減額される
- 施術管理者制度の導入:開業前の実務経験3年間と施術管理者研修の受講を必須化
厚生労働省が実施した施策については、次の記事で詳しく解説しています。
参考:【要注意】接骨院・整骨院の不正請求のパターンやバレる理由、国の対策について
柔道整復師に支給される療養費が減少しているから
柔道整復師は行った施術にかかった費用のうち、7~9割については保険を適用すると療養費として受け取れます。残りの1~3割を患者様から一部負担金として徴収すればよいため、医療機関と同じように安価な施術サービスを提供できます。
しかし現在、療養費は減少傾向にあり、保険の取り扱いをやめて自費メニューのみを提供する施術所も出始めています。療養費の変化については、次の記事で詳しく解説しています。
参考:整骨院・接骨院で健康保険による施術を行う際の注意点や患者対応のポイントを解説!
保険の取扱い事態を止める整骨院も出始めているため、いずれは保険を使えなくなると考えると考える人もいるようです。
整骨院・接骨院で保険を適用できる症状について
確かに、このまま整骨院や接骨院の不正請求が増えると、保険を使えなくなると危機感を募らせる人が出てくるのも無理はありません。不正請求を増やさないためにも、保険を使える症状と保険を使えない症状を確認して患者様にも周知することが大切です。
保険を使える症状
整骨院や接骨院では、次に示す急性症状に限り保険を適用して施術できます。
- 骨折
- 挫傷
- 脱臼
- 打撲
- 捻挫
ただし、骨折と脱臼の施術をする場合は緊急の場合を除いて医師の同意が必要です。
保険を使えない症状
整骨院で保険を適用できない症状の具体例を示すと、次のとおりです。
- 慢性腰痛
- 肩こり
- 首のこり
- 変形性関節症
- スポーツや労働による筋肉疲労
保険を使えない症状には、以上の他にもさまざまなものがあります。原因のはっきりしない慢性症状には保険を適用できないため、注意しましょう。
保険規制強化への対策とは?自費メニューの導入が必須
現在は、保険適用の審査基準をかなり厳しく設定している保険者もみられます。そのため急性症状に該当すると考えられる請求に対しても、受け付けてもらえないケースもあるようです。
今後は、審査の基準がさらに厳しくなることも予想されるため、整骨院の経営を維持するためには自費メニューの導入は必須と考えられます。
自費メニューの導入が求められる背景
前述したように、柔道整復師には療養費が支給されづらくなっています。さらには過当競争下にある業界で選ばれるためには、自費メニューを導入して、他の整骨院や接骨院との差別化を図ることが大切です。
「この施術はここでしか受けられず、しかも効果がある」と患者様に認知されれば、ライバル店との差を付けられます。
自費ニューの種類
自費メニューと一口に言ってもその種類はさまざまです。整骨院・接骨院で扱う自費メニューには、主に以下のようなサービスがあります。
- 運動療法
- 骨盤矯正
- 物理療法
- リラクゼーション
- 鍼灸
それぞれについて解説します。
運動療法
腰痛や肩こりの予防、ダイエット、ケガや病気のリハビリなどを目的とした療法です。柔道整復師の知識を活用し、身体の正しい動かし方を指導したり、運動メニューを考えたりします。
骨盤矯正
出産や生活習慣でバランスが崩れた骨盤を整える施術で、体型を気にする女性に人気があります。顧客満足度を高めるためには施術だけではなく、運動メニューの提案や日常生活のアドバイスを通してアフターフォローを充実させることが大切です。
物理療法
物理療法とは、電気療法や温熱療法などで直接患者の身体に働きかける施術方法の総称です。施術機器を導入するためのコストが必要ですが、特別な資格は必要ないため比較的すぐに自費メニューに組み込めます。
リラクゼーション
リラクゼーションは患者様にリラックスしてもらうことを目的に行う施術です。気持ちよさを求めて施術を受ける人が多く、メンタルケアの一環としても注目されています。30分や60分などの施術時間によって料金が異なるのが一般的です。
鍼灸
鍼灸は鍼の高い鎮痛効果や自律神経症状への効果に対する期待値が高く、代替医療のなかでも人気です。鍼灸師の資格が必要なため、自分が鍼灸師の資格を取得したり、鍼灸師を雇用したりすると自費メニューとして導入できます。
柔道整復術との親和性も高く、施術の前後に鍼灸を行うことで、相乗効果が期待できます。
以上、自費メニューの種類について5つ紹介しました。実際にメニューを作ったり、導入したりする場合は、以下の無料でダウンロードできる資料を参考にしてください。
参考:整骨院・接骨院の自費メニューの作り方!料金設定や回数券についても解説
自費メニューを導入する流れ
自費メニューを導入する流れは次のとおりです。
- 自店が導入できる、または顧客のニーズが高そうな自費メニューを調査する
- 自費メニューを導入するのに必要な機材や資格を調べる
- 機材を購入したり資格を取得したりした上で、どのくらいの価格で自費メニューを提供できるか考える
- 現在の顧客や新規顧客になりそうな人に、自費メニューのプロモーションをして反応を見る
- 資格を取得したり機材の導入をしたりして、自費メニューの提供を開始する
自費メニューを予告なくはじめると、保険施術を受けていた既存患者の離脱につながる恐れがあるため注意しましょう。保険を使って低価格帯で施術を受けてきた患者様が高額な施術料金を見ると、料金が高くなったと勘違いしてしまい来院しなくなる恐れがあるのです。
自費メニューを導入する3ヵ月前くらいから院内に掲示するなどして、周知することをおすすめします。
自費メニューの導入に迷ったら、運動療法を取り入れるのもおすすめです。昨今は健康志向の高い人が多いため、ニーズにマッチした自費メニューを提供できます。次の資料で詳しく解説しているので、無料でダウンロードしてご覧ください。
自費メニュー導入の注意点
自費メニューを導入する際に注意すべきポイントは、次のとおりです。
- 機材の購入費の回収までには時間がかかる
- 資格の取得にはお金や時間がかかる
- 予告なく導入すると既存顧客が離脱する可能性がある
以上のポイントを把握して、自費メニューの導入を成功させましょう。
機材の購入費の回収までには時間がかかる
高額な機械の購入費を、売上を積み上げて回収するまでには時間がかかります。そのため施術機器が必要な自費メニューを導入する場合は、資金計画を練りましょう。施術機器のなかには、200万円以上の高額なものもありリースするケースも多いです。
リースをすると毎月支払いが必要となるうえに、途中解約できないため注意が必要。金融機関で借り入れをするのと同じような状況になるため、支払いが滞らないように綿密に計画を立てることが大切です。
資格の取得にはお金や時間がかかる
最近は鍼灸を自費メニューに組み込んで、鍼灸整骨院を運営する施術所も増えています。
鍼灸を導入する場合は、資格が必須です。資格を取得する前に3年の期間と500万円程度の学費がかかります。
自分で鍼灸師を取得して自費メニューに組み込む場合は、通学に必要な期間と学費も想定して計画しましょう。
通学期間と学費をカバーすることが難しい場合は、鍼灸師を雇うのも1つの手段です。正社員での雇用で社会保険料などを負担できない場合は、業務委託契約で鍼灸師を雇うケースもあります。
予告なく導入すると既存顧客が離脱する可能性がある
自費メニューは付加価値があり、費用がかかることを顧客に納得してもらいやすいものです。しかし、急に自費メニュー導入を理由に価格変更をすれば、既存顧客が離脱してしまう可能性もあります。
自費メニューを導入する場合は、保険施術を受けていた既存患者が離脱しないように配慮することが大切です。メニュー導入の3ヶ月くらい前から告知を開始して、保険施術も継続することを伝えましょう。
整骨院・接骨院の保険規制の強化に備えて対策をしよう
今回は、整骨院・接骨院で保険が使えなくなるといわれる理由や、整骨院・接骨院で導入する自費メニューの種類や注意点を解説しました。
整骨院や整体院で、健康保険を適用して施術できる症状は限られます。今後は保険審査が厳しくなり、今までに適用されていた症状が受け付けてもらえないケースも出てくるかもしれません。
保険に依存した整骨院経営に不安を抱えている場合は、自費メニューの導入をぜひ検討してみてください。
<参照元>
ZERO MEDICAL | 整骨院で保険が使えなくなる!?国の不正防止審査がより厳しく!整骨院の保険診療の実情
厚生労働省 | 柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて
厚生労働省 | 柔道整復、はり・きゅう、マッサージ、治療用装具に係る療養費の推移(推計)