「集客」について悩む鍼灸院経営者は少なくないはず。
効果的な集客方法を探す中で、「チラシは効果あるかも」と考える方もいらっしゃるでしょう。
鍼灸院での集客を考えた時に、チラシは効果的なツールです。とはいえ、ただチラシを撒けば良いわけではありません。成果を上げるために把握するべきポイントが存在します。
そこで当記事では、鍼灸院のチラシを作成するにあたり、正しい内容や効果的な方法について紹介していきます。
最後まで目を通すことで、鍼灸院に売上をもたらすチラシの活用法が理解できるでしょう。
鍼灸院の高齢者向け集客ではチラシでの広告が有効
近年、インターネットが急激に普及し、手軽にホームページやSNS等での広告が可能となりました。しかし、鍼灸院に来院される方には、インターネットを利用されない方も多数いらっしゃいます。
特に年齢層の高い方は、インターネットを利用されていないケースが多いので、オンライン広告と合わせてチラシでの広告が有効です。また、チラシは紙媒体なので、オンライン広告よりも手渡しで友人に紹介しやすいという利点もあります。
チラシの費用対効果は?離脱防止策も併せてよく考えてからチラシを作ろう
一般的にチラシの反響率は0.01%~0.3%程度といわれます。これを元にどれくらいの効果が出るのかざっくりフェルミ推定してみましょう。
※「フェルミ推定」とは調査が不可能と思われるような数値を、既に明らかになっている数値をもとに論理的に推定する方法です。
仮に商圏を3㎞以内、100m2毎に1世帯の家があるとすれば、商圏内に約27万世帯があることになります。実際にはマンションなどで世帯数はもう少し多いと考えられるのでここでは約30万世帯とします。
この30万世帯の10%である3万世帯を対象にチラシを送ったとして、反響率が0.01%~0.3%だとチラシによる集客効果は30~90名になります。 一方で、現在、印刷・ポスティングの両方を対応してくれる業者は、安くても1通50円は超えてくるので、仮に3万世帯全てに送ると150万円です。
元を取るためには、仮に90名集めることに成功しても一人あたり1.67万円の売上を上げないと回収できません。30名程度の集客効果(反響率0.1%)であれば、一人あたり5万円の売上を上げてようやく回収できる程度です。
いかがでしょうか? 新規客を集める際には想像以上のお金がかかります。その点、離脱を抑える工夫は基本的にはコストを掛けず実施できます。
継続率を高める仕組みをまだ検討されていない方は、チラシの前に離脱防止策を検討しましょう。
参考:【整骨院・接骨院向け】無料でできる集客効果の高いチラシの作成方法とは?
参考:整骨院・接骨院の広告とは?広告規制や正しい広告内容について解説します
鍼灸院の広告規制に注意する
鍼灸院のチラシを作成する上で、一番注意しなければならないのは広告規制です。
鍼灸院の広告は、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(通称あはき法)」の第7条で定められている事項以外はできません。
広告の違反があった場合、はり師・きゆう師の業務に関する不正行為となり、一定期間の業務停止や免許取消が命ぜられる可能性があります。
良いチラシが作成できたとしても、広告違反になってしまっては元も子もありません。チラシで広告できる内容を把握し、適正に作成することが大切です。
鍼灸院のチラシで掲載できる内容
ここから、鍼灸院のチラシに掲載できる内容を解説していきます。
チラシ活用にあたって、ぜひ確認しておいてください。
業務の種類
具体的な施術内容の広告は一切禁止されていますが、はり師・きゅう師が行う業務は掲載できます。掲載可能な「はり師・きゅう師」の業務とは、以下の通りです。
・はり
・きゅう
・鍼
・灸
・鍼灸
・やいと
・えつ
・小児鍼(しょうにはり)
「やいと」や「えつ」は灸のことをいいます。すべての業務の種類を掲載してしまうと、複雑になってしまいますので、注意が必要です。
また、業務の内容の一つとして「医療保険療養費支給申請ができる旨」を掲載できます。
医療保険療養費支給申請とは、いわゆる健康保険を使用して療養費を請求する業務のことをいいます。健康保険を使用すると、患者様の負担金は少なくなりますので、医療保険療養費支給申請を取り扱っている場合は、広告しておくと効果的です。
ただし、申請する場合は、医師の同意が必要になります。ですので「医療保険療養費支給申請ができる旨」を広告するときは、その旨をしっかりと明示しなければいけません。
施術所に関する事項
「施術所の名称・電話番号・所在の場所を表示する事項」は掲載可能です。
施術所の外観写真、地図、最寄り駅からの所要時間も掲載可能となっていますので、積極的に掲載していきましょう。他にも、ファックス番号、電子メールアドレス、ホームページのURLやQRコードも掲載できます。
また、施術日や施術時間に関する事項も掲載できます。それに関連して、休日や夜間の施術の有無、予約に基づく施術の有無、出張による施術(訪問鍼灸)の有無なども掲載可能です。
施術予約を電話やファックス、電子メールアドレスなどで受け付けている場合は、その旨を掲載しておきましょう。予約の詳細として、予約優先制か完全予約制かを掲載することもできます。
鍼灸院のチラシで掲載できない内容
続けて、鍼灸院のチラシに掲載できない内容・表現について解説します。
チラシを作成する際は、十分に注意してください。
誇大・比較表現
誤解を招くような表現とは、すなわち「誇大広告」や「比較優良広告」のことをいいます。「誇大広告」とは、実際の内容よりも過剰に表現してしまうことです。
例えば「最先端」や「根本」、「最新機器」などのワードを使った広告は、表現を大袈裟にしてしまっていますので、禁止されています。また、施術の対象として「更年期障害」や「顔のゆがみ」などの効果を勘違いさせるような表現も掲載してはいけません。
最近多いのが、施術前と施術後の状態を写真で撮影し、それをチラシに掲載して効果があることをアピールしているような広告です。このような事例も誇大広告になりますので、掲載しないようにしましょう。
「比較優良広告」とは、他院よりも勝っているような表現をしている広告のことをいいます。例えば「満足度NO.1 」や「 優良鍼灸院」などです。このような表現も患者様に誤解を与えてしまいますので、禁止されています。
経歴や実績、施術内容
自身が卒業した大学や専門学校の名前、所属している学会の名前などの経歴は、患者様が他の鍼灸院と比べることになりますので掲載できません。施術した実績も同様なので、「延べ〇〇万人の施術実績」などの掲載も控えるようにしましょう。
また、前述の通り「施術の具体的な内容」の掲載は禁止されています。例えば「〇〇式美容鍼灸」や「〇〇流鍼灸施術」などです。鍼灸院でよくある流派や作法は、掲載したいですが、法律違反になってしまうので広告には掲載しないようにしましょう。
もちろん、「◯◯のツボを使って腰痛を改善」「自律神経を調整して肩こりを改善」といった記載も禁止です。
加えて、施術の料金も掲載できないので注意してください。
医療行為と誤認される表現
「医療法」や「医師法」により、患者様が誤認してしまうような紛らわしい名称や表現の使用を禁止されています。鍼灸は「医業類似行為」であり、「医業」ではありません。医療行為は行えないため、「クリニック」や「治療院」など、患者様が医療機関と誤認してしまうような名称は使用できません。
特に、鍼灸院で使われがちな誤った名称は「〇〇東洋治療センター」や「〇〇三療院」、「はり科・きゅう科」などです。
また、以下のような表現も掲載できませんので注意しましょう。
・治療
・診察日
・診察時間
・休診日
・初診
・往診
治療・診療・診察は「施術」に、診察時間・診療時間は「施術時間・受付時間」に、休診日は「休日・施術曜日・年中無休」に言い換えて対応するようにしましょう。
鍼灸院でチラシを作成する際のポイントは?
鍼灸院のチラシは法律に注意しながら適正に作成し、かつ効果的なものを作らなければなりません。
ここでは、より効果的に集客するために、鍼灸院のチラシ作成ポイントを解説していきます。
鍼灸院のターゲットを明確にする
鍼灸院のチラシを作成する前に、自院が力を入れていて宣伝しようとしている、施術やサービスなどを決めましょう。また、どのような人に需要があるのかを考えます。
「年齢」「性別」「仕事」「性格」「住んでいる地域」「経済力」「家族構成」など細かく考え、何通りかのターゲットを設定しておくと、チラシ作成がスムーズです。
なぜターゲットを決めるかといいますと、いくらチラシを作成しても、配られた人にあまり関心や興味がない内容が記載されていると、すぐに捨てられてしまうからです。
スーパーのチラシの場合は、主婦の方やサラリーマン、お年寄りの方など様々な方が利用されますので、そこまでターゲットを絞らなくても効果は出るでしょう。
しかし、鍼灸院の場合は利用される方が絞られますので、しっかりとターゲットを決めたうえでチラシを作成するようにしましょう。
他院との差別化を図る
チラシは前述の通り、配布するだけで完了ではなく、しっかりと興味も持ってもらわないといけません。鍼灸院だけでなく整骨院・接骨院、整体院、リラクゼーションサロン、エステサロンなど同業他社のチラシも沢山入っています。
このようなチラシの中から、自院を選んでもらうためには、他の施設との差別化を図る必要があります。たとえば、自院の強みをアピールできるように写真やイラストを入れたり、目にとまりやすいようにデザインを工夫したりしてみると良いでしょう。
配布する時間帯やエリアを決める
配布(ポスティング)する時間帯やエリアを決めることも重要です。なぜなら、狙おうとしているターゲットがどのあたりに住んでいて、どの時間帯に集客できるのかを考えることで、集客効果が大きく変わってくるためです。
また、早朝や夜に配布すると、お客様によっては嫌がる方もいらっしゃいますので注意しましょう。
外出から帰ってくるタイミングはポストを確認する可能性が高いので、集客効果は高いです。高齢者や主婦であれば、比較的お昼ご飯までに帰ってくる方が多いので、午前中にポスティングした方がいいでしょう。サラリーマンなど働いていらっしゃる方は、一般的に夕方に帰って来られますので、それまでにポスティングすれば良いです。
より効率的で反響のあるポスティングを実施したい場合、配布する時間帯やエリアを事前によく練る必要があります。
ホームページやSNSと連携させる
先に触れたように、チラシに掲載できる内容は限られています。したがってチラシだけでは院の魅力や特徴を伝えることは難しいでしょう。
そこで、チラシから鍼灸院のホームページやSNSにスムーズに移行できるような導線作りが大切です。
おすすめはQRコードです。チラシにQRコードを載せることで、スマートフォンからすぐにホームページやSNSを閲覧できます。
ぜひ、チラシとネットを連携させましょう。
鍼灸院のチラシはどうやって作成・配布する?
中には「そもそも鍼灸院のチラシはどのように用意するの?」と思う方もいるでしょう。
ここから、チラシ作成方法について解説します。
自身でチラシを作成・配布する
まず、自身でチラシを作成して配布する方法があります。
テンプレートが用意されているサイトもいくつかあり、ある程度パソコンを使えれば、自身でチラシを作成することが可能です。
完成したチラシを、鍼灸院近くの一軒家や集合住宅に配布していきます。自身で作成から配布まで行えれば、金銭面でのコストを限りなく0に抑えてチラシ集客を始められます。
ただし、ある程度の根気がいるうえに、施術とは別に時間の確保が必要です。
院の看板に設置して配布するのも有効
鍼灸院の外の看板にチラシを置く方法もあります。
看板にチラシ入れ(カタログポスト)を設置し、作成したチラシを入れて「ご自由にお持ちください」とメッセージを添える方法がおすすめです。
普段から鍼灸院の前をよく通っており、身体の不調に悩んでいる方はチラシを手にしてくれる可能性があります。
簡単に用意できる方法なので、ぜひ実践してみてください。
業者にチラシ作成から配布まで依頼する
もう一つは、業者にチラシの作成から配布まで依頼する方法です。
専門家が作成するチラシは見栄えも良いはずですし、近所の家に配布する手間も省けます。「忙しい」「デザインに自信がない」という先生にはおすすめです。
ただし、こちらが希望する大まかな完成図や、「あはき法」を守った文言を業者側にしっかり伝える必要があります。したがって、擦り合わせには時間がかかると認識しておきましょう。
鍼灸院集客にチラシを使う際の注意点
ではここから、鍼灸院集客にチラシを使う際の注意点を解説します。
注意点をおさえておかなければ、効率的にチラシを使うことは難しいです。
あらかじめ目を通しておいてください。
【開業前】まず鍼灸院のコンセプトを固める
ホームページやSNSと違い、紙のチラシが印刷された後に変更を加えることは難しいです。したがって、何度も自由に変えられるものではありません。
これから鍼灸院を開業する場合、まず院のコンセプトや方針をしっかり固めたうえでチラシ作成に入りましょう。
ホームページやSNSも定期的に更新する
先述したように、チラシとホームページ・SNSを連携することが大事です。
とはいえ、ホームページの見栄えが良くなかったりSNSが更新されていなかったりすれば、せっかく見込み客がチラシを経由して見に来ても魅力が伝わらず、来院につながりません。
したがって、ホームページやSNSは定期的に更新し、改良を加えましょう。
チラシは何度も配布する必要がある
チラシを1回配り、爆発的な来院につながることはほとんどありません。
その理由として、チラシをじっくり見る人が減っているからです。ポストに入っているチラシを、ほぼチェックせずにゴミ箱に捨てるという方も多くいます。
チラシを手に取ってもらうには、「見込み客に気づいてもらう」「見込み客の悩み(ニーズ)と一致する」ことが大切です。
つまり、同じ地域に何度もチラシを配布する必要があります。1回配布して効果がなくても、そこで辞めずに繰り返し配布してみてください。
「チラシ投函禁止」の物件も増えている
鍼灸院のチラシは、一軒家や集合住宅のポストに投函することが多いですが、「チラシ投函禁止」の物件が増えているので注意が必要です。
そういった家に投函した結果、トラブルにつながる可能性があります。
したがって、「チラシ投函禁止」と書かれている家にチラシを配布するのは避けましょう。
まとめ
鍼灸院のチラシを作成する際は、広告規制に注意しながら作成する必要があります。せっかく良いデザインのチラシが作成できても、広告規制に反していては配布できません。
「あはき法」に記載されている項目をしっかりと確認して、適切にチラシを作成しましょう。
チラシは、活用次第で強力な集客ツールになります。すぐに効果は出ないかもしれませんが、ぜひ根気よく続けてみてください。