【要注意】接骨院・整骨院の不正請求と国の対策について

【要注意】接骨院・整骨院の不正請求と国の対策について

近年、整骨院・接骨院での不正請求が問題となっています。

不正請求とは施術した回数や部位を偽造することで、必要以上に多くの療養費をもらう行為を指します。

そこで今回は、不正請求の具体的な事例や発生の背景について紹介していきます。

整骨院・接骨院での不正請求とはどういうもの?

柔道整復術は病院での診察と同じように、窓口で保険証を見せれば健康保険の自己負担分だけを支払えばよいと認められています。この特例制度のことを「受領委任払い制度」と呼びます。

受領委任払い制度において、整骨院は患者様に負担してもらわなかった分(基本は医療費の7割)を会社の健康保険組合や全国健康保険協会といった保険者へ請求します。不正請求は、主に整骨院・接骨院から保険者への請求において発生します。

不正請求のパターン①:施術箇所の偽造

まずひとつは施術箇所の偽造です。たとえば腰の痛みで来院した患者に対し、腰だけでなく肩や腕の施術を同時に行うやり方です。

実際の来院目的とは違う部位を診ることで、実際に必要だった分よりも施術費を多く請求することが可能です。また実際には施術を行わず、書面上だけ施術を行ったことにして架空の申請を行うケースも少なくありません。

不正請求のパターン②:施術箇所を転々と変える

次に、施術箇所を転々と変える方法です。こうしたやり方は俗に部位転がしと呼ばれます。部位転がしは「主な来院目的とは違うところを怪我したことにして、通院を引き延ばす行為」を指します。

施術院としては患者に定期的かつ長期間通ってもらうことで安定した収入が得られます。しかし、正しく施術を続ければ多かれ少なかれ症状は改善し、来院頻度は必然的に減っていきます。

そこで、たとえば腰だけが痛い患者様に対し「あと少しで治るのでもう少し通ってほしい。カルテには肩を痛めたと書いておく」などと伝え、施術を継続させる施術院も存在します。これが部位転がしです。

施術箇所の偽造も部位転がしも、一回の施術に対して必要以上に多い額を請求するためのやり方です。こうした不正請求を疑われないためにも、紙や電子でカルテをしっかりと保管しておくことが重要となってきます。

どうして整骨院・接骨院で不正請求が行われるのか?

では次に、なぜ不正請求が起きてしまうのかの理由についてお話します。

保険診療では施術できる範囲が限られているから

実は、整骨院・接骨院では健康保険が使えない施術が存在し、保険証が適応できる症状は以下の通りです。

・急性の打撲、捻挫、挫傷(肉離れ)
・骨折、不全骨折、脱臼(応急手当以外は医師の同意が必要)
・(原因がはっきりしている)筋違い、ぎっくり腰

一方で、よくある質問ですが以下のような症状では保険証を利用した施術はできません。

・日常生活の疲労による肩こり、腰痛など
・外科・形成外科との併用

上記のように、保険診療では原因がはっきりしていて急性の症状に限定されています。

そこで、施術範囲が限られていると、より売上を伸ばすには患者様を多く呼び込むことが必要になる一方、患者様の絶対数には限界があります。そこで、一部の施術院が既存の患者様の状態を悪用し、不正請求に手を染めることに繋がるのです。

療養費が年々減少しているから

整骨院・接骨院が受けとれる療養費は年々減少しており、一方で受け取る側の柔道整復師の数は増加しています。

このように、療養費の減少と柔道整復師の増加という二つの面から、現在の整骨院・接骨院は以前よりも儲けづらいという背景があります。

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もちろん、稼ぎにくくなっているからと言って不正を働いてよい理由にはなりません。どんな理由であれ、不正請求は絶対に行ってはならない行為です。

そのような中、今まで発覚した不正請求はどのようにしてバレているのでしょうか?次は不正請求が発覚する原因について解説していきます。

患者様からの情報提供

不正請求の多くは患者様に黙って勝手に行われます。しかし、患者様自身が不自然な点に気づいて保険者へ問い合わせることが多いです。「肩こりでかかったはずなのにいつの間にか腰痛の扱いになっていた。これはどういうこと?」などは典型的な例です。

多くの患者様は整骨院・接骨院の不正請求についてはあまり詳しくありません。違法のからくりを知らないからこそ、施術院ではなく保険者へ直接尋ね、不正が発覚するのです。

また、たまたま精査で疑問を持った保険者が患者様に確認することもあります。患者側からすれば「会社の健康保険組合から身に覚えのない施術について聞かれたがどうして?」という形で、患者側の情報提供により不正請求が発覚することもあるでしょう。

内部告発

従業員が直接告発することもあります。事情は様々ですが、院長に対する不満や、経営方針を変えようという意識が内部告発へと繋がるのでしょう。

内部告発ですと保険者の方にも実情をありのまま伝えられるため、すぐさま監査に繋がる可能性が高くなります。

一方で、事情に明るい同業他社や元従業員が「あそこの整骨院・接骨院は不正をしている」と保険者へ告発する事例も存在します。詳しくは後述しますが、柔道整復師の間でも蔓延する不正請求に対して危機感を持っている人が多くいらっしゃるのも事実です。内部告発と同様に、業務を是正しより健全な運営を目指そうという志に基づいているようです。

整骨院・接骨院での不正請求に対する国の対策

横行する不正請求に対して国も対策を取っています。以下は代表的なものとなります。

長期に渡って施術した場合の料金減額

先程引用しました「柔道整復の施術に係る療養費関係」によると、ひとつの打撲・捻挫の施術が3ヶ月以上続いた場合、国は支給申請書に「長期施術継続利用書」の添付を求めています。また、初検から5ヶ月を超えた場合はさらに施術費用を80パーセントまで減らすよう定めています。

国の施策は、完治しているにも関わらず何度も通わせようとする企みを防ぐためのものです。特に長期施術継続利用書の添付を義務付けたこともあり、同調査によれば4月目の支給申請書は全体の6.5パーセント、さらに6月目以降は2.0パーセントに留まります。1月目の支給申請書は全体の52.0パーセントであることを加味すると大幅な減少と言えるでしょう。

しかし、長期通院によるペナルティを回避するために、今度は部位転がしという不正請求が増加しました。

多部位を請求した場合の給付率低減

施術部位をあちこち変えることで療養費を確保する部位転がし。国はこれに対し、2010年に3部位以降の通院の場合、給付率を80パーセントから70パーセントに下げ、さらに4部位目以降は給付を包括(0パーセント扱いに)しました。2013年には3部位目の給付率を60パーセントまで低下。施術部位を変えるメリットを削りました。

上記の施策のおかげか、施術の部位数を比較してみると、2009年には5.7パーセントを占めていた4部位の申請は、給付が包括された翌年にはほぼ皆無となりました。さらに一月あたりの平均施術回数は2001年から2014年の13年間で6.34回から5.39回まで減少しました。

上記のデータから鑑みて、国の施策は4部位以上の部位転がしに対し、一定の抑制効果を発揮していると見られます。

不正請求は今後も厳しく処罰される

厚生労働省は相次ぐ不正請求を受け、2018年から柔道整復師の認定を受けた人に2日間の研修を義務化しました。研修では正しい療養費の申請方法や職業倫理を学び、より質の高い整復師の育成を目指しています。

また、罰則面の強化を望む声も強くあります。

ひどい例になると、一部の不正請求が暴力団の資金源となっていた事件が挙げられます。西日本新聞と厚生労働省の調査によれば、2015年には暴力団と組んだある柔道整復師が1億円超の巨額の不正請求を行っていました。彼らは架空の施術記録を作成すると、100以上の保険者に療養費を請求。合計で1億2000万円を騙し取ったとされます。不正に関しては患者も了承していたという大規模な犯罪だったため、被害額が膨れ上がりました。一部の不正請求によって健全に経営しているはずの柔道整復師が疑いの目を向けられるなど、業界全体に悪影響が出ていると考えられます。

こうした業界全体の課題もあり、保険適応以外の症状を有する患者様に対しては、しっかりと納得していただいた上で自費診療への移行を行う施設が増えてきました。

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【接骨院・整骨院】の不正請求に関するまとめ

本来であれば安心して治療を受けられるはずの整骨院・接骨院の裏で、不正請求が行われているなどあってはならないことです。ただし、その背景には言い訳はできないものの、柔道整復師業界の全体を取り巻く経営の厳しさがあります。

柔道整復師は本来身体の不調を改善して、よりよい暮らしを助けるための仕事です。そこで、利用する側も厳しい目線を持つだけでなく、経営サイドも不正が起こらないよう注意を払いながら店舗運営を心がけていきましょう。

<参照元>

http://www.kensetsukokuho.or.jp/member/hoken/14.html

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000134996.pdf

https://www.e-shugi.jp/contents/325/0

http://mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/171227-02.pdf

http://nishinippon.co.jp/item/n/413376/


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