現在、日本の労働市場は労働者の売り手市場といわれており、あらゆる業界で人材採用の難易度が上がっています。
採用難易度が高い状況は、整骨院・接骨院も例外ではありません。とくに柔道整復師を雇う場合、医療系国家資格を取得した人材を雇う必要があるため、他業種よりもさらに採用が難しい状況にあるのではないでしょうか。
本記事では、整骨院や接骨院でスタッフを採用する方法や成功させるためのポイントを解説します。
柔道整復師の採用難易度が高くなっている背景
現在、柔道整復師の採用難易度が高くなっているため、ポイントを抑えて採用しないと十分な人材を確保できない恐れがあります。
そもそも、なぜ柔道整復師の採用難易度が高くなっているのでしょうか。本項では主な背景を3つ紹介するので、参考にしてください。
施術所の増加
現在、整骨院や接骨院などの施術所の数が増加傾向にあります。
※厚生労働省の資料をもとに作図
2018年以降は増加の割合が落ち着いたものの、少しずつ増加しています。施術所数が増加すると、限られた柔道整復師を取り合うことになるため、採用の難易度が高くなります。
柔道整復師の合格者の減少
上記の施術所数の増加に加えて、柔道整復師の合格者が減少していることも採用難易度を上げる要因になっています。
公益社団法人 柔道整復研修試験財団によると、平成20年から30年にかけて4000~5000人ほどいた国家試験の合格者数が令和に入ると、3000人を下回りました。受験者数の減少と合格率の低下が原因で、柔道整復師になる人材が減少しているのです。今後もこの状態が続くと、柔道整復師の採用難易度がますます高くなると予想されます。
働き方の多様化
働き方が多様化しているため、求職者のニーズに合わせることが難しくなっています。
とくにZ世代はプライベートを重視する傾向にあり、残業を避け、短時間勤務や休暇制度の充実を希望する傾向にあります。
Z世代とは1990年代半ばから2010年代前半に生まれた世代をさし、1980年代~1990年代半ばに誕生したミレニアル世代とは異なる価値観を持っている点が特徴です。
今後はZ世代の価値観に合わせた働き方に対応できなければ、若年層の採用が難しくなるでしょう。
また子育て世代が働きやすい職場を目指すことも重要です。少子高齢化対策として、昨今は政府主導で子育て支援が進められており、男女ともに育児休暇の取得がしやすい職場環境が求められています。
他にも介護のための時間を確保する必要のある人材も増えているので、短時間で働けるように職場環境を整えることも必要です。
以上のように、現在は働き方が多様化しているため、それに対応できるように職場環境を整えなければ、採用で人材を採用することが難しくなっています。
整骨院・接骨院で働くスタッフを採用する方法
整骨院・接骨院で働くスタッフを採用する主な方法を挙げると、次のとおりです。
- 求人サイト
- 学校の就職課
- 合同企業説明会
- 人材紹介サービス
- ハローワーク
- 自社サイト
- リファラル採用
- SNS
- インターンシップ
- アルムナイ採用
- ダイレクトリクルーティング
それぞれについて解説します。
求人サイト
求人サイトは、求職者と採用企業を結びつけるオンラインプラットフォームです。求職者は無料で利用できるため、現在では多くの人材が求人サイトを活用して仕事探しをしています。
採用側は求人情報や自社のPRを求人票に記載して、自社にマッチした人材を募集します。インターネットを活用するため、幅広い人材に自社で働くように訴求できます。また求職者側は、検索機能を活用して希望する職場を見つけやすい点が魅力です。
整骨院・接骨院のスタッフを募集する場合、柔道整復師の採用に特化したサイトを利用するのもおすすめです。柔道整復師に特化したサイトを利用すれば、整骨院・接骨院にマッチした人材を見つけやすくなります。
柔道整復師に特化したサイトとして、リジョブやジョブメドレー、柔整ワーカーなどが挙げられます。
学校の就職課
学校の就職課を介した採用は、昔から多くの整骨院や接骨院で行われてきた方法です。学生のころからアルバイトとして雇い、免許取得後に施術を担当させる事例も見られます。
現在は専門学校や大学のホームページに採用担当者向けのページが準備されているので、学校から直接人材を紹介してもらいたい場合は、問い合わせるとよいでしょう。
合同企業説明会
合同企業説明会とは、複数の企業が集まって同じ会場で会社説明会を行うイベントです。大規模なものからターゲットを絞り込んだ小規模なものまでさまざまなタイプがあります。
採用側が合同説明会を行うメリットは、多くの求職者に自社で働く魅力をPRしやすいことです。個別で説明会をするよりも、多くの来場者が期待できます。
さらに採用担当者が対面で求職者とコミュニケーションを取れることも魅力です。求職者の質問に直接答えられるため、求職者が自社で働く素晴らしさをイメージしやすくなります。
整骨院や接骨院のスタッフを採用したい場合は、柔道整復師や鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師をターゲットにした治療家向けの合同企業説明会に出展するとよいでしょう。
いわゆる治療家向けに実施される主な合同説明会として、たとえば治療家就職フェアやセイリン社主催の企業説明会などが挙げられます。
人材紹介サービス
人材紹介とは、企業の要望に適した人材を紹介するサービスです。求職サイトや求人広告は掲載した時点で広告料が発生するのに対して、人材紹介サービスは採用が完了した時点で成果報酬を支払う仕組みです。
初期コストがかからないうえに、適切な人材を選別するための負担がないことがメリットです。
採用に至った場合は、採用した人材が希望する年収に対して30~35%の成果報酬が発生します。仮に600万円の希望年収であれば、成果報酬として180万円~210万円を支払うことになります。
ハローワーク
ハローワークは厚生労働省が運営する公共職業安定所で全国各所に設置されているため、地域で人材を募集する際に活用されることが多いです。
ハローワークの魅力は、期間や回数に限らず、料金が一切かからないことです。さらに公的機関が運営する職業安定所であるため、信頼度が高く多くの利用者がいる点も魅力です。採用費用を抑えたい場合は、有力な選択肢の1つとなるでしょう。
その一方で応募する側の条件や制限が厳しく設定されていないため、求める人材とは異なる応募が増える傾向にあります。そのため多くの応募者のなかから自社にマッチした人材を選定する際に、人的負担や時間的コストが発生するかもしれません。
自社サイト
昨今は自社サイトで柔道整復師を募集する整骨院や接骨院が多くなりました。自社サイトであれば、採用ページを設置したり、ブログに人材募集を掲載したりするだけで無料で採用活動をはじめられます。
すでに整骨院や接骨院のサイトを持っている場合は、まずは自社サイトを使って柔道整復師を募るとコストを抑えて人材を採用できる可能性があります。
複数のグループ院を抱えている会社であれば、求人専用のサイトを立ち上げている事例もあります。募集要項の他にも、既存スタッフの声や代表者挨拶、企業理念を掲載してサイトを充実させることで多くの求職者に興味を持ってもらえます。
リファラル採用
リファラル採用とは、既存スタッフに友人や知人を紹介してもらって人材を採用する方法です。既存スタッフが自分が一緒に働きやすい人材を紹介してくれるため、採用後にミスマッチが起こりにくい点がメリットです。
その一方で既存スタッフの紹介に頼ることになるため、大量採用には向いていない点がデメリットです。グループ展開や新規開業などで複数のスタッフが必要な場合は、他の採用方法と併用して実施するとよいでしょう。
SNS
現在はSNSを活用して採用活動をするケースも見られます。整骨院や接骨院が採用活動で利用する主なSNSを挙げると、次のとおりです。
- LINE
- X(旧:Twitter)
- YouTube
- TikTok
SNSの魅力は拡散力の高さです。SNSユーザーが興味を持つような投稿をして、広く拡散されれば多くの求職者に自社をアピールできる可能性があります。
ただし拡散力を高めるためには、長期にわたってアカウントを運用してフォロワーを集めることが大切です。そのため、今すぐ柔道整復師を募集したい場合には不向きな採用方法といえます。
インターンシップ
インターンシップとは学生が会社に就職する間に、実際に働いて職場の業務内容を体験することです。学生側は事前に業務内容を把握できるため、就職後に働き方についてイメージとは異なる事態に陥ることを避けられます。
また企業側も就職後のミスマッチを防ぎ、新入社員の早期離職を防げるメリットがあります。現在はグループ院を抱える整骨院や接骨院を中心に、インターンシップを定期的に開催するケースも目立つようになりました。
小規模事業者の場合も、専門学校や大学から依頼を受けてインターンシップを希望する学生を招くこともあります。
アルムナイ採用
アルムナイ採用とは何らかの理由で自社を退職した人材を再雇用することです。大手企業を中心にアルムナイ採用を取り入れるケースが増えていますが、整骨院や接骨院のスタッフ採用の場合は現在のところ一般的ではないかもしれません。
しかし今後、人材の獲得競争が激しくなると整骨院業界でもアルムナイ採用を取り入れる企業が出てくる可能性があります。まずはアルムナイ採用の存在だけでも把握しておくとよいでしょう。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、採用側が求める人材を採用するために、積極的に行動する採用のやり方です。
SNSの活用やリファラル採用などは、ダイレクトリクルーティングに含まれます。SNSを活用する場合は、ターゲットとなる求職者もしくは現職者にメッセージを送り自社で働くように促します。
他にも、求職サイトのスカウトメールを活用して求職者と直接コンタクトを取る方法もあります。ダイレクトリクルーティングの魅力は、特定の求職者にマッチするように自社で働くメリットを伝えられる点です。
入社してもらいたい求職者のニーズにマッチするように、うまく自社の魅力を伝えられれば、入社意欲の向上につながります。
整骨院・接骨院の採用を成功させるためのポイント
整骨院・接骨院の採用を成功させるためには、以下のポイントを意識しましょう。
- 自社にマッチした人材を採用する
- 待遇について他院と差別化を図る
- 採用スケジュールを立てる
- 教育システムを整える
各項目について詳しく解説します。
自社にマッチした人材を採用する
まずは自社にマッチした人材を採用することが基本です。採用側と求職者側がマッチした条件で採用に至るためには、次の点をチェックしましょう。
- 自社が希望する業務内容を遂行する能力があるか
- 求人への応募者が自社の業務内容や労働条件を把握しているか
- 求職者が自社の理念や方針に共感しているか
とくに整骨院や接骨院の場合、保険施術と自費メニューによって業務内容が大きく異なります。保険施術を中心に提供している整骨院や接骨院であれば、施術だけではなく請求業務を担当してもらうことも伝えるようにしましょう。
自社にマッチした人材を採用する方法として、職場体験やインターンシップを導入するのも1つの手段です。実際に職場で働くことで、業務内容や雰囲気を感じることができるため、ミスマッチによる早期離職を防げます。
待遇について他院と差別化を図る
待遇について他院と差別化を図ることも1つの手段です。待遇面で他院と差別化を図る方法として、他院よりも賃金を高く設定することが有効です。
しかし、賃金を高く設定する余裕がない整骨院や接骨院も多いのではないでしょうか。そのような場合は、次のような差別化の方法もあります。
- 残業がないことをアピールする
- 休暇が多いことをアピールする
- 高い技術を身に着けられることをアピールする
- 人間関係が良いことをアピールする(既存スタッフの声を掲載)
- 短時間勤務ができることを掲載する
地域の競合院が提示している採用条件を確認して、他社よりも優位な条件としてアピールできる自社の魅力をチェックしてみましょう。
採用スケジュールを立てる
とくに新卒者を採用する場合には、採用スケジュールを立てることが大切です。柔道整復師の取得を目指す学生の場合、3月に実施される国家試験の勉強に集中するために、前年の春先から夏休みまでに内定を獲得する点が特徴です。
多くの整骨院が4月頃から求人を出したり、就活イベントを開催したりするため、他者に乗り遅れないように採用スケジュールを立てましょう。
教育システムを整える
教育システムを整えると、求職者が採用後に自分の手技や患者さんへの対応について自信を持てるため、仕事に対するモチベーションを維持しやすくなります。
モチベーションが高いスタッフは離職しようと考えづらくなるため、採用した人材に長く働いてもらいやすくなるでしょう。
さらに教育システムが充実していることをアピールできれば、未経験の柔道整復師が安心して求人に応募できます。未経験でも教育を受けると、患者さんに適切なサービスをできるようになることを面接や職場体験会で伝えられるようにしましょう。
教育システムを構築するに当たって、まず大切なことは教育内容を標準化して、スタッフの誰もが患者さんに対して同じようなアドバイスや施術を提供できるようにすることです。
そうすることで、施術所の対応について一貫性を保つことにつながるため、患者さんとの信頼構築や施術パフォーマンスの向上につながります。
とはいえ教育のための資料やコンテンツをイチから作ろうとすると多大な時間がかかるため、なかなか取り組めないケースも多いのではないでしょうか。
そのような場合は、リハサクの導入を検討してみてください。リハサクを導入すると、800種類以上の運動メニュー動画を教育のためのコンテンツとしてもご活用いただけます。
エビデンスに基づく運動メニューをスタッフが提案できるようになるため、すべての患者さんに一貫したアドバイスを提供できるようになるでしょう。リハサクの詳細については、下記よりご覧ください。
整骨院・接骨院の採用を成功させよう
今回は整骨院や接骨院が活用できる採用方法を紹介しました。参考にしていただき、今後の採用活動にお役立てください。
また採用を成功させるためには、本記事で紹介した4つのポイントを意識することも大切です。自社にマッチした人材の採用や他院との差別化、採用スケジュールの立案、教育システムの整備を通して整骨院や接骨院の人材採用を成功させましょう。