柔道整復師の資格を取得し、経験を積むと独立開業のことを考える方が多いです。柔道整復師の業界は、どうしても勤務しているだけでは中々満足のいく収入が得られません。
複数の整骨院・接骨院を経営しているようなグループ院であれば、歩合やボーナスなどで十分な年収があるでしょう。
しかし、収入があってもグループ院の多くはマニュアルが存在するため、自分の思い通りに施術ができないので独立開業を考える方もいます。
当記事は、整骨院・接骨院の開業に必要な柔道整復師の施術管理者研修について解説します。
最後までお付き合いください。
柔道整復師が受講する施術管理者研修について
では、柔道整復師が受講する施術管理者研修はどのようなものなのか、徹底解説していきます。
施術管理者研修とは?
柔道整復師の施術管理者研修とは、療養費支給申請における受領委任を取り扱う施術管理者(いわゆる管理柔道整復師)になる場合、必要となる研修です。
以前は実務経験や研修の受講が必要なかったのですが、厚生労働省による社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会で決議され、2018年(平成30年)から施行されました。
目的としては、施術管理者が適切に療養費の支給申請を行い、質の高い施術を提供できるようにすることです。
裏を返せば、整骨院・接骨院を開業する際、健康保険を取り扱わない(受領委任を取り扱わない)場合は必要ありません。
しかしながら、多くの柔道整復師が健康保険を取り扱うので、必然的に研修を受けることになります。
受講が必要な柔道整復師
受講が必要な柔道整復師は、今後整骨院・接骨院を開業する予定がある方です。
開業するまでに施術管理者研修を受講し、受領委任の取り扱いをしておかないと、施術を行っても償還払いで対応しなければいけません。
償還払いになると、患者様は10割を整骨院・接骨院に支払い、残りの1〜3割の施術代は健康保険に自分で請求します。
これでは患者様の金銭的・事務的な負担が大きく、継続的な通院はしにくくなってしまいます。
受講の申し込み・研修の受講には時間が掛かりますので、前もって行動し、開業日から受領委任が取り扱えるようにしておきましょう。
また、勤務先で管理柔道整復師になる場合も、施術管理者研修の受講が必要です。
複数の整骨院・接骨院を経営しているグループ院は、退職や異動により管理柔道整復師の変更を余儀なくされるため、後任になる柔道整復師は研修を受講をしなければなりません。
研修修了証は有効期限があるので注意
ここで一つ気を付けたいのが、柔道整復師の施術管理者研修の受講を修了したとしても、研修修了証には有効期限があることです。
有効期限は受講修了から5年間で、例えば2024年2月25日に修了した場合、期限は2029年2月24日までとなります。
5年後に開業する予定があるからといって、先に研修だけ受けておこうとしている方は、あまりオススメしません。
もし、何かトラブルがあったり、開業の予定自体が無くなったりした場合、研修による時間とお金が無駄になってしまいます。
せめて1〜3年後に開業する予定がある場合は、先に研修を受けておくのは良いと考えます。
柔道整復師が施術管理者研修を受けるための要件
柔道整復師が施術管理者研修を受けるためには、いくつかの要件があります。要件をクリアしないと受講はできませんので、詳しく紹介します。
実務経験が必要
最も重要な要件で、施術管理者研修を受講するには実務経験が必要です。2024年3月までは2年間の実務経験で研修を受講できましたが、2024年4月からは3年間の実務経験が必要になります。
また、ただ単に3年間の実務経験があれば良いのではありません。いくつか条件があり、以下のようなものになります。
- 柔道整復師の資格を取得した後の期間であること
- 登録施術所又は保険医療機関の雇用契約期間であること
- 保険医療機関で従事した期間の証明は2年間までであること(1年間は登録施術所での実務経験の証明が必要)
- 複数の施設での証明が可能で、実務経験を合算できる
よって、学生の時にアルバイトで整骨院・接骨院に働いていたとしても、資格取得前になりますので実務経験にはなりません。
また、複数施設での実務経験の合算が可能で、それぞれの施設で証明をもらい、実務経験が合計で3年間になれば要件を満たします。
しかしながら、証明が必要な施設が廃止されていることもありますよね。実務経験期間の証明が不可能な場合は、以下のような書類を提出する必要があります。
- 「氏名・生年月日・従事期間」欄を記入した実務経験期間証明書
- 第三者による雇用契約関係の事実を証明する書類(公的機関が発行する書類や当該施術所からの給与の支払いが確認できる書類)
優先度の高さを考慮して受講者を決定
昨今、柔道整復師の増加に伴い、施術管理者研修の申し込みが急増しているため、優先度に合わせて受講者が決定されるようになりました。優先度は以下のようになります。
- 施術管理者死亡により、研修修了証の写しを後⽇提出する旨の確約書を地⽅厚⽣(⽀)局へ提出し、受領委任の取り扱いの登録⼜は承諾をされている⽅
- 開業はしているが、施術所に施術管理者がおらず、受領委任の取り扱いを⾏っていない⽅
- 既に開業準備を⾏っている⽅(不動産の売買・不動産の賃貸・設備の購⼊⼜器具の購⼊)
- 近⽇中(6ヶ⽉以内)に施術管理者が退職することから施術管理者がいなくなることが確定するため、同じ施術所に勤務する柔道整復師⼜は他の施術所からの後任者が新たに施術管理者となる予定の⽅
- ⾼齢等の事情から受領委任の取扱いを辞退する予定の親から事業承継を受ける同じ施術所に勤務する柔道整復師である⼦である⽅
申し込みは先着順ではなく、あくまで優先度により決定されますが、上記の優先度に含まれなくても受講できる可能性がありますので、申し込みをしておきましょう。
決められた期間に事前申し込みをしなければならない
施術管理者研修を受講するには、決められた期間にインターネットから事前申し込みを行う必要があります。
申し込み期間は研修日の約2〜3ヶ月前ですので、あらかじめ「公益財団法人 柔道整復師試験財団」のホームページにて確認しておきましょう。
また、申し込み書類は上記の優先度の高さによって異なります。下記の資料を参考に必要書類を作成し、早めに申し込みしておいてください。
https://www.zaijusei.com/doc/20240226_info_1.pdf
受講費用が掛かる
受講費用は25,000円で、申し込みをして受講が決定すると、すぐに受講費用を支払わなければなりません。
ある程度支払い期間はありますが、忘れてしまうと受講できませんので早めに支払えるよう準備しておきましょう。
柔道整復師の施術管理者研修の概要
最後に、気になる柔道整復師の施術管理者研修の概要を紹介していきます。
研修内容
まず、施術管理者研修は「公益社団法人 柔道整復師試験財団」が主催する研修です。基本的にオンラインでの受講で、定員は300名となっています。
東京会場ではオフラインでの受講もできますが、定員は10名ですので受講はかなり厳しいでしょう。また、申込者が100名を下回る場合は開催されず、受講料は返金となります。
主な研修内容は、職業倫理・適切な保険請求・適切な施術所管理・安全な臨床についてで、各分野の専門家から講義を4時間ずつ受けます。
オンラインでの受講ですので、インターネット環境の整備と1人の受講者につき1台パソコンが必要です。
スマートフォンやタブレットは推奨されていませんので、気を付けておきましょう。受講環境によっては、ヘッドホンやイヤホンの用意もあった方が良いです。
研修日時・期間
施術管理者研修は、連続した土日および祝日の2日間で開催され、時間は合計16時間以上と定められています。
研修のプログラムとして、1日目は9時30分から1パート目の「職業倫理」ついて講義が始まります。
12時30分まで講義をした後、レポートを提出し14時00分から2パート目の「適切な保険請求」ついて講義が始まりますので、あまり休んでいる暇はありません。
18時00分まで講義をしたら、18時30分までにレポートを完成させて1日目の研修が終了となります。
2日目も同様で、3パート目は「適切な施術所管理」を行い、4パート目は「安全な臨床」の講義を受けてレポートを提出すれば終了です。
研修中のレポートについて
研修中、各パートごとの最後に30分間の時間がありますので、そこでレポートを作成し提出します。
テーマは各パートごとに沿ったもので、2パート目の「適切な保険請求」の際は実際にカルテを作成し、部位の算定を自分自身で行わなければいけませんでした。
レポートのテーマは、すべて施術管理者に必要不可欠なもので、作成していてとても教訓になるものです。
まとめ
柔道整復師の施術管理者研修は、管理柔道整復師になる方にとっては必要不可欠です。
事前に申し込みをしておかないと、定員オーバーにより受講できない可能性もありますので、注意が必要です。
今後、管理柔道整復師になる予定のある方は、早め早めに動いておきましょう。
当記事が、皆様のお役に立てれば幸いです。
<参照元>
柔道整復師施術管理者研修 公益社団法人 柔道整復師試験財団
柔道整復師の施術に係る療養費の受領委任を取扱う施術管理者の要件について
柔道整復師施術管理者研修プログラム
柔道整復師施術管理者研修要綱
柔道整復療養費の受領委任を取扱う施術管理者に係る研修「施術管理者研修」の申し込み⽅法のお知らせ
柔道整復師施術管理者研修オンライン受講について
施術管理者研修 Q&A