日々の売上や保険請求、レセプト処理など、経営管理に追われがちな接骨院・整骨院。
「日計表をつけているけれど正しくできているか不安」「数字が合わずに締め作業が大変」と感じていませんか?本記事では、日計表の基本的な考え方から正しい書き方、効率的な管理方法までをわかりやすく解説します。
最後まで読み進めていただくことで、誰でも迷わず使える実践的な仕組みが整い、日々の経営がスムーズになります。ぜひお付き合いください!
接骨院・整骨院における日計表の基本
日々の施術や保険請求に追われるなかで、「売上を正確に把握できていない」「どこまで記録すべきかわからない」と悩む院も多いでしょう。
まずは、日計表の役割や目的、そしてレセプトや月計表との違いを理解することで、日々の記録がどれだけ経営に貢献するかを明確にします。
日計表とは何か?目的と役割を理解する
接骨院や整骨院における「日計表」とは、1日の売上・患者数・施術内容などを記録する管理帳票のことです。
店舗や事業所では一般的な「日次売上表」にあたりますが、接骨院の場合は保険請求やレセプト業務との関連が深く、より厳密な記録が求められます。
日計表をつける最大の目的は、経営状況の「見える化」です。
毎日の来院数・施術単価・保険請求額・自費収入を把握することで、月単位・年単位での売上の傾向を分析できます。
また、保険請求金額と現金売上の整合性を保つためにも欠かせません。
さらに、税務処理の観点からも日計表は重要です。会計ソフトに入力する際の基礎資料になるだけでなく、税務調査で「日々の取引を正確に記録しているか」を確認される際にも、この日計表が信頼性を裏付ける証拠資料となります。
整骨院・接骨院で日計表が必要とされる理由
整骨院・接骨院では、一般的な小売業やサービス業とは異なり、「保険施術」と「自費施術」の2つの収入源があります。
このため、単に現金売上を記録するだけでは不十分で、保険請求額との整合性をとる必要があります。
例えば、健康保険を利用した施術は「療養費支給申請書(レセプト)」として後日請求する仕組みになっており、現金収入とは別に計上されます。一方、自費メニュー(骨盤矯正・美容整体など)は当日現金で受け取るため、日計表上では「現金売上」として記録します。
以下のような複数の項目を一元的に記録・集計するのが日計表の役割です。
- 現金収入(自費・物販など)
- 保険請求収入(レセプト処理)
- 交通事故・自賠責対応分
日々の記録を積み重ねることで、月間売上の推移を正確に把握でき、経営判断に役立てることができます。
日計表と月計表・レセプトとの違い
「日計表」「月計表」「レセプト」は似たような用語ですが、それぞれの目的と使い方には明確な違いがあります。
- 日計表: 1日単位での売上や施術内容を記録する帳票
- 月計表: 日計表のデータを月ごとに集計し、売上・患者数の推移を把握する資料
- レセプト(療養費支給申請書): 健康保険を利用した施術分を保険者に請求する書類
つまり、日計表は「日々の記録」であり、月計表やレセプトの基礎データとなるものです。
日計表を正確につけておくことで、レセプト請求漏れや金額の不一致を防ぐことができます。
また、経営者がスタッフの施術件数や単価を確認し、改善点を見出すための管理ツールにもなります。
接骨院・整骨院の日計表の作成手順
日計表の存在は知っていても、「何を・どこまで・どのように書けばいいのか」が曖昧なまま運用している院も少なくありません。
この章では、1日の売上・施術件数・保険請求額を正しく記録するための具体的な流れと、記入ミスを防ぐための実践的なコツを紹介します。作成手順を正確に理解することで、日計表が「作業」から「経営ツール」へ変わります。
日々の売上・患者数を記録する流れ
接骨院・整骨院の日計表は、基本的に1営業日が終わった時点で作成します。施術担当者がその日の患者数・施術内容をまとめ、受付や会計担当が売上金額を確認し、帳票に記入する流れです。
一般的な項目は以下の通りです。
- 日付
- 来院者数
- 新患数・再来数
- 保険施術件数
- 自費施術件数
- 現金売上額
- 保険請求予定額
- 備考(特記事項やトラブル対応など)
これらを毎日つけることで、翌月の保険請求処理や会計ソフトへの転記がスムーズになります。特に、現金売上と保険請求分を混在させないことが正確な管理のポイントです。
日計表に記入すべき主要項目
接骨院の日計表では、単なる金額記録にとどまらず、「どのような施術を、どのくらい行ったか」という施術実績の記録も重要です。
日付・患者数・施術内容
日付はもちろん、1日の総来院者数を記入します。新患・再来を分けることで、マーケティング分析にも役立ちます。
また、施術内容を大まかに分類(保険・自費・交通事故)しておくと、後の分析が容易です。
現金売上・保険請求額・自費施術収入
現金売上は当日レジ締めの金額を、保険請求額は「施術録」や「療養費申請書」から集計した予定額を記載します。
自費施術収入は、物販を含めた当日支払いの総額を反映します。
領収書・レセプトとの照合
記入した金額は、発行した領収書や電子カルテのデータと必ず照合します。
整合性が取れていないと、翌月のレセプト請求時に金額ズレが生じ、保険者からの返戻(差し戻し)につながることがあります。
エクセル・手書き・クラウドの作成方法比較
日計表の作成方法には、大きく分けて「エクセル」「手書き」「クラウド管理」の3パターンがあります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを把握しておくと、自院に合った方法を選びやすくなります。
エクセルで作成する場合
エクセル(またはGoogleスプレッドシート)は、現在最も多くの整骨院・接骨院で利用されている方法です。
項目を自由にカスタマイズでき、数式を設定して自動集計やグラフ化も可能です。
例えば、日別の売上を自動で月計表に転記したり、施術件数を自動カウントしたりといった機能を簡単に実装できます。
メリット:
- 無料で導入でき、テンプレートも豊富
- 自動計算・分析が可能
- Googleスプレッドシートなら共有・編集も容易
デメリット:
- パソコン操作が苦手な人には扱いにくい
- 入力ミスが起こりやすく、チェック体制が必要
手書きで作成する場合
古くから用いられている方法で、紙の「日計表ノート」や「帳簿形式」を利用します。操作が簡単で即記入できるため、スタッフ全員が扱いやすいのが強みです。
ただし、集計や月次分析を行うには転記の手間が大きい点がデメリットです。
メリット:
- パソコンが苦手でもすぐ始められる
- 停電や機器トラブルの影響を受けない
- 手書きメモや注意事項を書き込みやすい
デメリット:
- 集計作業に時間がかかる
- 書き間違い・紛失のリスクがある
クラウド管理(日計表アプリ・会計ソフト)
近年は、「Airレジ」「freee」「Money Forwardクラウド会計」など、クラウド型の会計ソフトや電子カルテと連動した日計表管理ツールが増えています。
スマートフォンやタブレットからも入力でき、スタッフが複数いてもリアルタイムで共有・確認できるのが特徴です。
メリット:
- 自動計算・バックアップ機能でミスが減る
- データが即時に反映され、月次集計が簡単
- 電子カルテや予約システムとの連携が可能
デメリット:
- 月額費用が発生する
- 初期設定や操作習熟に時間がかかる
接骨院・整骨院の日計表テンプレートとフォーマット例
「フォーマットがバラバラで集計がしづらい」
「スタッフによって記入のクセが違う」
そんな悩みを解決するのが、統一されたテンプレートの活用です。この章では、エクセル・手書き・クラウドそれぞれのテンプレート例と、使いやすいフォーマットの作り方を具体的に紹介します。
明日から使える実用的な日計表を整え、業務の標準化を図りましょう。
エクセルで作成する基本テンプレート
エクセル形式の日計表を作る際は、以下のような項目構成がベーシックです。
このような表を1シートに1か月分まとめると、
- 1日ごとの売上集計
- 自動で月計表へ転記
- 年間売上分析への応用
が可能になります。また、関数を使って自動合計(SUM)や平均単価(AVERAGE)を算出すれば、経営分析にも役立ちます。
手書き日計表の構成と注意点
手書きで管理する場合は、ノート形式でもかまいませんが、「毎日同じ項目を記入できるフォーマット」を作ることが重要です。市販の帳簿やコクヨの「日計表ノート」を利用する方法もおすすめです。
手書き管理のポイントは次の3つです。
- 記入者を固定せず、誰が書いても同じ形式で残せるようにする
- 修正は二重線で行い、誤記録の痕跡を残す
- 月末に必ず数値を転記し、エクセルや会計ソフトにバックアップ
手書きだけでは長期的なデータ分析が難しいため、アナログ+デジタルの併用が理想です。
無料テンプレートのダウンロード・カスタマイズ方法
インターネット上では、「接骨院 日計表 テンプレート」「整骨院 日計表 エクセル」などで検索すると、
会計士事務所や治療院支援サイトが提供する無料テンプレートが多数配布されています。
利用の際は、以下の点に注意しましょう。
- 記入項目が自院の業務内容(保険・自費・物販など)に合っているか
- 関数が正しく設定されているか
- 消費税や保険請求額を別項目で管理できるか
テンプレートはそのまま使うよりも、自院の施術内容に合わせてカスタマイズすることが重要です。たとえば「交通事故対応」「紹介患者」「美容メニュー」などを独立項目に設定すれば、経営分析がより明確になります。
クラウド日計表の導入メリットと注意点
クラウド管理を導入すると、これまで紙やエクセルで行っていた集計作業を大幅に効率化できます。
Airレジやfreeeなどの会計ソフトでは、売上入力と同時に自動で日計表が作成され、月計表や決算書まで連携される仕組みがあります。
また、電子カルテと連携すれば「施術内容 → 売上 → 請求」までがシームレスに管理でき、入力ミスやレセプトの計上漏れを防ぐ効果もあります。
導入時は以下の項目を確認しましょう。
- スタッフがスマートフォンで簡単に入力できるか
- 保険・自費・物販が項目別に分けられるか
- 月額費用やサポート体制が適切か
費用は月1,000〜3,000円程度が一般的で、経理の手間を考えれば十分に費用対効果が見込めます。
日計表が合わないときの原因とチェックポイント
「日計表とレジの金額が合わない」、「保険請求額がずれている」そんな経験はありませんか?
この章では、日計表が合わなくなる主な原因を整理し、確認・修正のためのチェックポイントを詳しく解説します。数字のズレは、実は日々のちょっとした記入ルールの見直しで防げます。トラブルを未然に防ぎ、安心して締め作業ができる体制を整えましょう。
現金残高が合わない主な原因
「日計表の金額が合わない」と感じたとき、まず確認すべきは現金残高の不一致です。このズレは、多くの場合、以下のような単純なミスに起因しています。
- 領収書の記載漏れ・二重発行
現金売上を記入した際、領収書の発行を忘れたり、誤って二重に発行しているケースです。
領収書控えと日計表を突き合わせるだけでも、原因の特定ができます。 - 施術単価や回数の記録ミス
施術単価を手入力している場合、数字の打ち間違いや桁ミスが発生しやすいです。
可能であればエクセルの自動計算式を設定し、単価×件数を自動算出できる仕組みを作りましょう。 - 釣銭の誤差や端数処理
現金支払い時の端数処理や、小銭の数え間違いも頻発します。
会計終了後、すぐにレジ締めを行い、日計表への記録をその日のうちに完了することが重要です。
保険請求・レセプト計上ミスの確認方法
接骨院の日計表では、現金売上よりもむしろ保険請求(レセプト)との不一致が問題になることが多いです。請求金額を集計する際に注意すべきポイントは次の通りです。
- 施術日数と請求日数の整合性を確認
患者1人あたりの来院回数を、カルテと日計表で照合します。
来院記録が抜けていると、請求漏れの原因になります。 - 保険・自費の分類が正しいか
自費メニューを誤って保険施術として処理してしまうケースもあります。
「保険請求対象」「自費」「交通事故(自賠責)」を明確に分けましょう。 - 電子カルテとのデータ連携
電子カルテと日計表を別々に管理していると、整合性チェックに時間がかかります。
両者を連動させることで、入力ミス・計上漏れを自動的に防止できます。
締め作業でミスを防ぐコツ
日計表の記入・管理で最も重要なのは「締め作業の精度」です。特にスタッフが複数いる接骨院では、誰がどのタイミングで締めるかを明確化するルール作りが欠かせません。
- 毎日の締め時間を決める
営業終了後すぐに締めるのが理想です。後日に回すと記憶が曖昧になり、誤差が生じます。 - 現金・カード・保険請求を別々に集計する
レジ締め時には、現金売上とキャッシュレス決済を明確に区別し、同一シートに混在させないようにします。 - 締め担当と確認担当を分ける
一人が記入し、もう一人がチェックする「ダブルチェック方式」を採用することで、人為的ミスを防げます。 - 週単位・月単位で振り返る習慣をつける
1週間ごとに日計表を確認し、累計額や患者数の推移をグラフ化すると、異常値を早期に発見できます。
接骨院・整骨院におすすめの日計表管理ツール
紙やエクセルでの管理は慣れているものの、「もっとラクにできる方法はないか?」と感じる経営者も多いでしょう。この章では、人気の会計ソフトやクラウド管理システムを比較し、それぞれの特徴や導入のポイントを解説します。
手作業を減らしながら、正確で効率的な経営管理を実現するツール選びの参考にしてください。
会計ソフト(Airレジ・freee・Money Forward)の特徴比較
ツール名 | 特徴 | 月額料金目安 | 向いている院 |
Airレジ | 無料で使えるPOSレジ機能。レシート発行・日次集計に対応。 | 無料 | 小規模院・初期導入向け |
freee会計 | 日計表から会計処理まで一括管理。スマホ操作対応。 | 約1,300円~ | 中規模院・法人運営 |
Money Forwardクラウド | 銀行・カード・POSと連携して自動仕訳可能。 | 約2,000円~ | 会計連携を重視する院 |
これらのソフトを使えば、日計表の記録と同時に月次・年度の会計管理まで自動化できます。特にAirレジは無料で導入できる点が魅力で、「現金売上」「カード売上」を自動で区別し、日計表形式で出力できます。
電子カルテ連携タイプのメリット
電子カルテと連携できる日計表システムを導入すると、受付から会計までの情報が自動で記録されます。
たとえば「RIPICLE(リピクル)」や「STORES予約」などは、以下の項目を自動的に紐づけてくれるため、記入ミスや転記作業をほぼゼロにできます。
- 予約データ
- 施術内容
- 会計情報
また、電子カルテと一体化した日計表は、スタッフ間の共有にも優れており、管理者が離れた場所からでもリアルタイムで売上状況を確認できます。
クラウド管理による効率化と経営分析の活用法
クラウド型ツールを活用すると、単なる記録表としての日計表が、経営分析のためのデータ資産に変わります。
たとえば、以下のようなデータを自動で可視化することができます。
- 月別の自費率(保険収入と自費収入の割合)
- 曜日別来院数
- 新患・再来比率
これにより、「どの曜日に予約が集中しているのか」「自費施術の伸び率はどうか」といった経営戦略の判断材料を得られます。デジタル化は単なる効率化ではなく、経営の「見える化」と「利益最大化」につながる投資といえます。
まとめ:正確な日計表で経営の見える化を実現しよう
日計表は、単なる売上記録ではなく、経営の健康状態を測るバロメーターです。毎日の数字を正確に残すことで、保険請求のミス防止・会計処理の効率化・経営戦略の改善が同時に実現します。
ポイントは次の3つです。
- 現金・保険請求・自費を明確に分ける
- エクセルやクラウドを活用して自動集計化する
- 定期的に見直し、経営分析へつなげる
小さな作業の積み重ねが、後の大きな信頼と利益を生みます。正確な日計表管理で、「数字に強い接骨院経営」を目指しましょう。