人手不足が深刻化するなかで、柔道整復師の有効求人倍率は3.58倍というデータがあります(※1)。これは3社以上が1人の柔道整復師を取り合っていることになります。
このような状況下にあると、多くの接骨院・整骨院でスタッフが増えないという自体も発生しているのではないでしょうか。スタッフが増えないと、顧客増加への対応や事業拡大が難しくなります。
本記事では、整骨院・接骨院のスタッフを増やすための方法を詳しく解説します。採用数を増やす施策と離職数を減らす施策に分けて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
※1 参考:jobtagu|厚生労働省(2024年10月12時点のデータ)
接骨院・整骨院のスタッフが増えない理由
接骨院・整骨院のスタッフが増えない理由について、業界の要因と個別の要因に分けて解説します。
業界の要因
スタッフが増えない業界の要因として、次の2つが挙げられます。
施術所が増加しているから
施術所が増加しているため、多くの施術所が一人の柔道整復師を取り合う形となり、スタッフが増えづらくなっています。
厚生労働省の発表によると、全国にある柔道整復師の施術所は次のように推移しています。
調査した年(各年末現在) | 施設数 |
平成24年 | 42,431 |
平成26年 | 45,572 |
平成28年 | 48,024 |
平成30年 | 50,077 |
令和2年 | 50,364 |
令和4年 | 50,919 |
以上のように柔道整復師の施術所、すなわち整骨院や接骨院が年々増加しているため、徐々にスタッフが増えづらくなっているのです。
新卒の柔道整復師が減少しているから
施術所が増加するのと同時に、新卒の柔道整復師が減少しています。そのため、とくに新卒採用が難しくなっていると考えられます。
柔道整復研修試験財団のデータをもとに、年間の柔道整復師国家資格の合格者数を示すと次のとおりです。
試験の回数(実施年) | 合格者数 |
第1回(平成4年度) | 963名 |
第10回(平成13年度) | 1,128名 |
第18回(平成21年度) | 5,570名 |
第24回(平成27年度) | 4,582名 |
第32回(令和5年度) | 3,337名 |
第18回で過去最高の合格者数5,570名に達して以降は、徐々に減少して令和5年には3,337名でした。なお令和4年は、さらに少ない2,244名まで減少したので、柔道整復師の新卒採用の難易度が上がっていると考えられます。
個別の要因
柔道整復師のスタッフが増加しない理由として、各整骨院や接骨院の個別の要因も考えられます。次の3つを解説するので、参考にしてください。
労働条件が悪いから
まず、スタッフが集まらない大きな要因として「労働条件の悪さ」が挙げられます。長時間労働や給与が業界標準に比べて低いと、求職者の応募を引き寄せるのは難しくなります。休暇が取りにくかったり、福利厚生が整っていなかったりする点も大きなマイナス要因です。
また定期的に給与の見直しを行い、スタッフのモチベーションを保つ工夫も求められます。休日や福利厚生の充実も、働きやすい環境を作る重要なポイントです。
人間関係が険悪だから
次に、人間関係の問題もスタッフが増えない理由の一つです。職場の雰囲気が悪かったり、コミュニケーションが不足していたりすると、せっかく採用したスタッフがすぐに辞めてしまうことも少なくありません。特に接骨院・整骨院のような小規模な組織では、職場内の人間関係が円滑であることが重要です。
解決策として、日々のコミュニケーションを改善したり、定期的にチームミーティングを実施したりして、スタッフ間の信頼関係を築ける環境を整えることが重要です。
またチームリーダーや院長などの管理する立場にある人材に、ハラスメント研修を受けさせる方法も考えられます。ハラスメント研修を受けてもらうと、上司と部下との人間関係の改善が期待できます。
自社にマッチした人材を採用していないから
最後に、採用段階で自社にマッチした人材を選べていないことも、スタッフが増えない原因となり得ます。スキルや経験が求める条件に合致するだけではなく、自社の理念や方針に共感するスタッフを集めることが、採用後のミスマッチを防ぐためのポイントです。
そこで採用プロセスでは、スキル面だけでなく、企業文化や院の価値観を伝えられるようにすることが大切です。たとえば面接時には業務内容や職場の雰囲気をしっかり説明し、双方が納得できるようにしましょう。また採用後も適切なフォローを行い、スタッフが安心して働ける環境を提供することが定着率向上につながります。
接骨院・整骨院で働くスタッフ数を増やす方法
接骨院・整骨院で働くスタッフ数を増やすには、採用数を増やす施策と離職者数を減らす施策を同時に実施することが有効です。それぞれで分けて解説するので、参考にしてください。
採用者数を増やす
新しいスタッフを確保するための最初のステップは、効果的な採用戦略を構築することです。以下の方法で採用数を増やしましょう。
求人情報サイトに掲載する
求人情報サイトに求人を掲載すると、多くの求職者にアプローチできます。求人サイトは総合型と特化型の2パターンがあります。
総合型は、職種に限らず幅広く人材を募れる点が特徴で、たとえばdodaやマイナビ、リクナビなどが有名です。一方で特化型とは、職種を絞って採用できる求人サイトで整骨院や接骨院の施術者を雇う場合は、具体例としてリジョブや治療家ナビなどが挙げられます。
以上で紹介した民間の求人サイトを利用すると、基本的に掲載料が発生します。
一方で公的に運用されているハローワークに申し込めば、無料で求人情報をインターネットに公開できます。予算に限りがある場合、まずはハローワークに申し込むのもおすすめです。
予算を加味しながら、自社のターゲットとする人材に合った求人サイトに求人票を掲載するとよいでしょう。
採用ページを作成する
自院の公式ウェブサイトに専用の採用ページを設けることも、効果的な手段です。スタッフインタビューや院の特徴をアピールするコンテンツを掲載することで、求職者が職場環境を具体的にイメージしやすくなります。
また応募フォームを簡潔にし、応募プロセスをスムーズにすることも大切です。
採用ページを作成する場合、自院サイトのなかに採用ページを設置する方法と、採用専用のページをいちから作成する方法があります。前者は比較的低予算でできますが、後者は外注すると数十万単位の費用がかかります。予算と目的を加味して、自院にあった採用ページを作成しましょう。
リファラル採用を実施する
現スタッフからの紹介によるリファラル採用も効果的です。リファラル採用は信頼できる人材を確保しやすい点が魅力で、採用にかかるコストも削減できます。
リファラル採用に報酬制度を導入すると、既存スタッフの紹介に対するモチベーションを高められるため、新規スタッフの紹介を促す効果が期待できます。
専門学校とのつながりを作る
柔道整復師を養成する専門学校と関係を築き、インターンシップの機会を提供したり、会社説明会を開いたりすると、新卒を採用しやすくなります。
担当者が学校に足を運び、学生との接点を増やすと、優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。
離職者数を減らす
採用だけでなく、離職率を抑えることもスタッフを増やすのに有効です。そのためにも教育制度や労働条件を整えましょう。他にもさまざまな施策が考えられますので、本項で詳しく解説します。
教育制度を整える
新規スタッフや既存スタッフに対して、定期的な研修やキャリアパスの提供を行うと、働きがいを感じてもらえます。施術技術だけでなく、患者対応やカウンセリングスキルの向上もサポートできるように、教育環境を整えることが大切です。
整骨院や接骨院で教育制度を整える際には、次の記事も参考にしてください。
整骨院・接骨院におけるスタッフ教育のやり方とは?効果を高めるコツも紹介
労働条件を整える
労働条件の整備は、離職防止のためには欠かせません。適切な勤務時間、休日、有給休暇、福利厚生の充実など、従業員が長期的に安心して働ける環境を提供することで、定着率を向上させられます。
労働条件を改善するには、まず業界の平均的な給与水準や労働時間を調査し、自社の条件を見直すことが必要です。給与水準を調べる際には、厚生労働省が運営するjobtagが役に立ちます。
また労働条件については、まずは労働基準を満たしているかどうかをチェックするとよいでしょう。次を満たしているかどうか確認してみてください。
- 使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
- 使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
- 使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
求職者に提供する情報を充実させる
求人票や面接時に提供する情報が不十分だと、採用後にスタッフとして実際に働き始めたときにミスマッチが露呈します。
求職者には、勤務条件や仕事内容をできる限り詳細に説明し、入職後のギャップを減らすことが重要です。
求人票を詳しく記入する
求人票には、仕事内容や求めるスキル、条件を具体的に記載することが重要です。曖昧な表現や過度な期待を抱かせる記述を避け、現実的な情報を伝えましょう。そうすることで、応募者とのミスマッチを防ぎ、定着率の向上が期待できます。
職場見学会を開催する
求職者に職場見学の機会を提供することも効果的です。実際に職場を見学することで、職場の雰囲気やスタッフの働きぶりを確認でき、応募者は安心感を得られます。
また見学会の実施後は質疑応答を行い、見学会への参加者の疑問点を解消すると、不安を取り除けます。
接骨院・整骨院で働くスタッフが増えない場合の人手不足対策
人手不足が進む昨今、さまざまな施策を講じてもスタッフが増加しないケースもあるのではないでしょうか。そのような場合は、未経験者の採用を検討したり、少人数で業務に当たれるように体制を整えたりする必要があります。それぞれをスムーズに進めるためには、マニュアルの作成やデジタルツールの導入を検討するとよいでしょう。
マニュアルを作成する
マニュアルを作成すると、未経験者の成長を早めることができ、即戦力として現場での活躍を促進できます。マニュアルを作成する際は、次の手順で進めるとよいでしょう。
- 情報収集
- 業務フローの整理
- マニュアルの改善
情報収集をする際は既存の施術スタッフに、どのようなカウンセリングや施術を行っているのかを詳しくヒアリングします。
情報を収集したら、それを整理して院内スタッフに共有します。さらにマニュアル通りに業務を遂行してもらい、改善を繰り返すとよいでしょう。
デジタルツールを導入する
デジタルツールを導入すると、施術以外の業務負担を軽減できるため、少数でも整骨院や接骨院の運営をしやすくなります。具体的におすすめのデジタルツールを挙げると次のとおりです。
- インターネット予約システム
- ポスレジ
- 電子カルテ
- クラウドシステム など
インターネットシステムやポスレジは、主に顧客対応にかける負担を軽減できます。電子カルテやクラウドシステムは、スタッフ同士、またはスタッフと患者さんとの情報共有を効率化する際に便利です。
運動療法クラウド「リハサク」は、スタッフ同士の情報共有とスタッフと患者さんの情報共有の両方をサポートできます。
スタッフ同士で情報共有する際は、簡易カルテ機能や院内共有メモを活用すると、患者さんの症状や状態、アドバイス内容などをリアルタイムに共有できます。
またスタッフと患者さんとの情報共有については、アドバイスしたセルフケアを患者さんの携帯端末を通して伝えられる点が魅力です。紙に印刷して手渡しする手間が省けるので、アフターフォローにかける人的負担の削減につながるでしょう。
リハサクについて詳しく知りたい場合は、下記より資料をダウンロードしてご覧ください。
接骨院・整骨院で働くスタッフを増やそう
人手不足が進む現代においてスタッフの確保が難しくなっている整骨院・接骨院も多いのではないでしょうか。
スタッフを増やすためには、採用数を増やす施策と離職者数を減らす施策の両方を講じることが大切です。今回は、それぞれ5つずつ具体的な施策を紹介したので、ぜひ実践してみてください。
人手不足の厳しい状況ですが、自院にあった施策を実施すると、きっとスタッフを増やせるでしょう。