整骨院や接骨院の施術者にとって、技術力だけでなく、患者さんと会話する力も重要なスキルの1つです。会話で患者さんに好印象を与えられると信頼関係を築けるため、リピート率のアップも期待できます。
しかし施術者のなかには、会話が苦手なケースも少なくありません。本記事では、会話の苦手意識を克服し、患者さんとの円滑なコミュニケーションを実現するための具体的な方法とポイントを紹介します。
整骨院・接骨院の施術者に求められる会話とは?
整骨院や接骨院の施術者が患者と良好な人間関係を保つためには、コミュニケーションに配慮することが重要です。
効果的な会話術を駆使して、患者さんが安心して施術を受けられるようにしましょう。ここでは、施術者が意識すべき5つのポイントについて説明します。
相手を気遣う言葉
施術者は、まず患者の心情に寄り添う姿勢が大切です。
患者さんは不安や痛みを抱えて来院するため、まずは「痛みは大丈夫ですか?」や「何か不安なことはありますか?」といった気遣いの言葉をかけると、安心できます。
些細な一言でも、患者さんの心が軽くなるため、施術前後の会話ではとくに相手を気遣う言葉を意識しましょう。
雑談
施術中に適度に雑談を入れると、患者さんとの信頼関係を築きやすくなります。また患者さんの趣味や最近の出来事など、気軽に話せるテーマで会話をすると、リラックスした雰囲気を作り出せます。
ただし雑談は過度にならないように気をつけましょう。あくまでも患者が話しやすい環境を作ることを目的としてください。
また雑談が苦手な患者さんもいらっしゃるので、無理に話を盛り上げようとせずに、相手のペースに合わせて話すとよいでしょう。
説明
施術前には、患者さんのお体の状態や施術内容について、丁寧に説明することが大切です。
専門用語を使わずに、分かりやすい言葉で説明すると、患者さんに理解してもらいやすくなります。
説明の際には、施術を行う目的も教えてあげると、患者さんにも納得して施術を受けてもらえるでしょう。たとえば、次のような説明のやり方を意識してみてください。
- 「まずは炎症を抑えるために、冷やします」
- 「筋肉の緊張を取るために、まずは筋肉をほぐす施術を行います」
- 「関節の動きをよくするために、少し関節を動かすような施術を行います」
以上のような説明を加えることで、施術を受ける理由や効果を把握できるので、安心して施術を受けられます。
ヒアリング
患者の声に耳を傾けることも重要です。痛みの程度や不調の原因について、しっかりとヒアリングすると、適した施術方法を選択できます。
具体的には、次のような質問をするとよいでしょう。
- 「どのような時に痛みを感じますか?」
- 「どのような動きで痛みが軽減されますか?」
以上の質問で、患者の状態を正確に把握しましょう。
クロージング
施術後のクロージングは、患者さんがしっかりと通院して、状態をよくしてもらうために重要です。
クロージングの際には、施術の効果や今後の治療計画についてまとめ、次回の予約を促しましょう。
「今日の施術で少し楽になりましたか?」といったフィードバックを求めつつ、次回の施術内容や改善点について簡潔に説明すると次回の予約をとりやすくなります。これにより、患者は自分の健康管理に対して積極的な姿勢を持つことができます。
整骨院や接骨院の施術者には、技術だけでなく、患者さんとの効果的なコミュニケーションが求められます。適切な会話を通じて、患者さんがリラックスし、信頼関係を築けるよう心がけましょう。
整骨院・接骨院の施術者が苦手な会話を克服するためのコツ
整骨院や接骨院の施術者にとって、患者さんとのコミュニケーションは重要ですが、会話が苦手な方も少なくありません。
そこで会話のコツを意識してコミュニケーションの取り方を改善すると、患者との信頼関係を築きやすくなります。ここでは、会話を克服するための具体的なコツを紹介します。
トークスクリプトを準備する
会話に自信がない場合は、あらかじめトークスクリプトを準備することが有効です。初回のあいさつや施術の説明、施術後のフィードバックなど、よく使うフレーズをまとめると、スムーズに話が進みます。
またスクリプトを使うと、話すべき内容が明確になり、無駄な沈黙を避けられるメリットもあります。
ロールプレイングを行う
苦手意識を克服するには、実践的な練習が不可欠です。より実践に近い状態で会話を練習する方法の1つにロールプレイングが挙げられます。
ロールプレイングは、患者役の人と模擬会話を行って、実際のシチュエーションに近い形で会話を練習する方法です。定期的にロールプレイングをすると、自然な流れで話せるようになり、自信を持って患者さんとコミュニケーションを取れるようになります。
患者さんの話を聞くことに意識を向ける
会話は話すことだけでなく、相手の話を聞くことも重要です。患者さんの話をしっかりと聞き、共感を示すと、安心感を与えられます。自分が次に話そうとする内容に集中しすぎるのではなく、相手の言葉に耳を傾けることがコミュニケーションの基本です。
相槌をうつ
相槌をうつと、相手に「話をしっかり聞いてもらえている」という印象を与えられます。たとえば、頷きながら「そうですね」「わかります」といった短い言葉を挟むだけでも、患者さんは自分の話を受け入れてもらえていると感じるでしょう。
患者さんに興味を持つ
患者さんに興味を持つと、患者さんが話すことに集中したり、質問が思いつきやすくなったりします。
また患者さんのライフスタイルや趣味、仕事に対して興味を持ち、その話題に触れると、信頼関係を築けます。単なる施術者としてではなく、患者さんに寄り添う存在として、患者さんの生活にも関心を持つ姿勢が大切です。
結論から話す
結論から話すと、自分が話す内容を相手に理解してもらいやすくなります。結論を話した後は、その結論にいたる理由や具体例、たとえ話などを入れるとさらに理解を促せるでしょう。
例えば、腰痛の患者さんに施術の説明をする場合、次のように説明するとよいでしょう。
- 結論:「骨盤矯正を行うと、腰痛が軽くなります。」
- 理由:「現在、〇〇さんの骨盤は前に傾き過ぎています。そこで、骨盤矯正を受けると正常な位置に戻るので、腰が楽になります。」
- 具体例:「実際に、〇〇さんのように腰が痛い方が来院した際に、骨盤矯正を5回くらい受けたら、腰が楽になりました。」
といったように、結論を先に伝えると患者さんも内容を理解しやすくなります。
会話が苦手な施術者でも、これらのコツを意識して実践することで、徐々に自信を持って患者さんとコミュニケーションを取れるようになるでしょう。患者さんとの信頼関係を築き、リラックスしてもらうためにも、日ごろから意識してみてください。
整骨院・接骨院の施術者が会話するときに注意すべきこと
患者さんと会話する際は以下の点に注意しましょう。
- 過度にプライベートに踏み込んだ質問を避ける
- 専門用語を使わない
- センシティブなテーマに触れない
- 患者さんのペースに合わせて話す
それぞれについて詳しく解説します。
過度にプライベートに踏み込んだ質問を避ける
患者さんと会話する際には、過度にプライベートに踏み込んだ質問は避けるべきです。たとえば、次のような話題を持ち出すと患者さんに不信感を与えるので注意しましょう。
- 金銭状況や収入:具体的な収入、借金、財産状況などに関する質問
- 恋愛や性的な関係:恋人や配偶者との具体的な関係性、性生活などに関する質問
- 家庭の問題や個人の苦境:家族間のトラブルや過去のトラウマ、心理的な問題についての質問
- 宗教や政治的な信念:宗教や政治的な意見に関して踏み込んだ質問。
必要以上に個人的な質問は控え、施術に関係する範囲での会話を心がけましょう。
専門用語を使わない
施術の説明や状況の説明において、専門用語の多用は避けるべきです。患者さんが理解しづらい言葉を使うと、逆に不安になる可能性があります。
専門的な知識を持たない患者さんでも理解できるよう、小学生でも理解できるような簡単な言葉遣いを意識しましょう。専門用語を平易に言い換えた具体例を挙げると次のとおりです。
- 筋肉を弛緩させる→筋肉をほぐす
- 脊柱→背骨
- 殿筋→お尻の筋肉
- 大腿筋→太ももの筋肉
- 筋肉の硬結→筋肉のこり など
他にもさまざまな言い換えが考えられるので、日ごろから簡単な言葉遣いを意識しましょう。
センシティブなテーマには慎重になる
体重や骨格のゆがみなどのセンシティブなテーマに、必要以上に触れることは避けるべきです。
とはいえ整骨院や接骨院の施術者の場合、施術説明の過程で体重や骨格のゆがみに触れざるおえないケースもあります。そのような場合は、安易に「太っている」「痩せている」、「背骨がゆがんでいる」と表現すると患者さんを傷つける可能性があるため、注意しましょう。
客観的な数値で体系やゆがみを表現する
数値をもとに客観的な事実を伝えると、患者さんを傷つけずにセンシティブなテーマにも触れやすくなります。
「太っている」や「痩せている」などの表現は主観に頼った表現であり、周囲からどのように見られているのか患者さんに意識させることになります。そのため患者さんに対して安易に「太っている」と言ってしまうと、患者さんは「自分が太って見えるんだな」とショックを受けるかもしれません。
そこでこのような場合は、客観的な数値のみを示すと患者さんを傷つけずに済みます。たとえば「現在の体重が75kgなので、膝への負担を減らすためにも65kgを目指しましょう。」などと数値で表現すると、主観を挟まずに客観的な事実を提示しながら、体重の減少を促せます。
背骨の状態についても、画像を見せながら角度などで伝えられると、主観ではなく客観的な事実のみを伝えられるため、患者さんを傷つけずに済みます。
客観的な数値で体のゆがみを患者さんに伝えたい場合は、専用のツールを活用すると便利です。AI姿勢分析システム「リハサクポスチャー」も、患者さんの体の傾きを数値で伝えられるので、ぜひ導入を検討してみてください。
患者さんのペースに合わせて話す
会話のペースも重要です。施術者が一方的に話すのではなく、患者さんがリラックスして自分のペースで話せるよう配慮することが求められます。
とくに高齢者や言葉に不自由さを感じる患者さんの場合、焦らずゆっくりと話すことが大切です。患者の反応を見ながら適度なペースで会話を進め、相手に寄り添う姿勢を示しましょう。
施術者としての会話は、患者との信頼関係を築くための大切な手段です。これらの注意点を意識することで、患者が安心して施術を受けられる環境を提供できるでしょう。
整骨院・接骨院の施術者におすすめの会話ネタ
ここまで会話のコツを紹介しましたが、今すぐ使えるような会話ネタを知りたい施術者も多いでしょう。ここでは、すぐに使えるおすすめの会話ネタを紹介します。
不安や悩みを深堀する
患者さんは痛みや不調に対する不安や悩みを抱えていることが多いため、これらの問題に対して積極的に質問し、深堀りすることが効果的です。例えば、次のように尋ねてみてください。
「最近、他にも何か気になる症状はありますか?」
「夜は痛みで眠れないことがありますか?」
「痛みが原因で日常生活に支障はありませんか?」
患者さんが感じている悩みを詳しく聞くと、施術方針を立てる際にも役立ちます。また、患者が抱える不安の解消にもつながるでしょう。
施術の強さについて尋ねる
施術中の力加減や痛みの感じ方は、患者さんによって異なるため、施術の強さについて尋ねると施術サービスへの満足度向上につながります。次のような会話が有効です。
「この強さで大丈夫ですか?」
「痛みが出ていないか教えてください」
「触れてほしくない部位はありませんか?」
以上の質問を挟みながら、患者がどのように感じているのかを確認して施術を進めるとよいでしょう。これらの質問は、整骨院の施術のなかでもリラクゼーション系のメニューを提供する際に有効です。
体の状態について尋ねる
施術の前後に、体の状態について尋ねるのも良い会話のきっかけとなります。具体例として、次のような会話が挙げられます。
「まだ痛み感じる部位はありますか?」
「今日の施術後、体の変化を感じますか?」
以上の質問は、施術の効果を確認し、次の施術計画を立てるための参考にもなります。患者さんも自分の体の反応を意識することで、回復させようとする意欲が高まるでしょう。
患者さんが興味のある運動やスポーツについて尋ねる
患者さんが趣味としている運動やスポーツについて尋ねるのもおすすめです。スポーツをしている患者さんであれば、次のような質問をすると会話が弾みます。
「最近どんな運動をしていますか?」
「スポーツの大会に向けて準備していることはありますか?」
「先日の成績はどうでしたか?」
以上の会話は患者さんのライフスタイルに寄り添ったテーマなので、患者さんが施術者に対してより親近感を持ちやすくなります。
施術中の会話への苦手意識を克服しよう
本記事で紹介したコツや会話の具体例を取り入れると、施術中の会話への苦手意識を克服できます。すぐに使える会話ネタも紹介したので、患者さんとのコミュニケーションに自信を持ちたい場合は、まずは実践してみてください。
施術中の会話への苦手意識を克服して、患者さんから信頼される施術者を目指しましょう。