理学療法士が資格取得や海外就労、他業種への転職をすると年収600万円以上を稼ぐことは十分に可能です。さらに副業や起業を成功させると、年収1000万円も期待できます。
今回は理学療法士を取り巻く環境や収入実情を紹介しつつ、年収アップを目指す方法についても具体例を挙げながら解説します。
年収600万円以上あるいは、年収1000万円を稼ぎたい場合は、ぜひ参考にしてください。
理学療法士の平均年収について
令和4年賃金構造基本統計調査によると、理学療法士の平均年収は約430万6800円。また国税庁の調べによると、令和4年における給与所得者の平均年収は458万円でした。つまり理学療法士の平均年収は、日本の平均を下回ることになります。
なお令和5年賃金構造基本統計調査によると、理学療法士の年収は約432万5200円で令和4年と比べて少しアップしました。このうち、ボーナスは年間で71万4400円、月収は30万900円です。
ここでは理学療法士の年収が日本の平均を下回る理由と、理学療法士の年収の特徴について解説します。
※ 年収の計算方法:年収=(「きまって支給する現金給与額」×12)+「年間賞与 その他特別給与額」
年収が日本の平均年収を下回る理由
理学療法士の平均年収が低い理由は、従事者の年齢が低いからです。令和4年賃金構造基本統計調査では、理学療法士の平均年齢は34.7歳。その一方で、国税局が調べた給与所得者の平均年齢は47歳です。
理学療法士の平均年齢は日本の給与所得者に比べて10歳以上も低いため、年収が下回ると考えられます。
そこで45歳~49歳の理学療法士の平均年収を令和4年賃金構造基本統計調査で調べると、517万9900円です。全業種平均の458万円を約60万円上回ります。
以上からわかることは、理学療法士の年収は他業種に比べて低いわけではなく、むしろ高いということです。
理学療法士の年収の特徴
理学療法士の年収は、景気に左右されづらい点が特徴です。医療機関の売上は、診療報酬によって支えられているうえに、一般的にケガや病気の治療には優先してお金を使います。
理学療法士は医療機関で働くことの多い職業であり、経営が安定しやすい医療機関から報酬を得ているため収入も景気の影響を受けづらいと考えられます。
理学療法士が年収1000万円を達成するための考え方
理学療法士の年収は同年代の他業種と比較すると高いうえに、安定しているため、収入では恵まれた職業といえます。しかし病院勤務の理学療法士が年収1000万円を達成するのは難しいかもしれません。
理学療法士の年収を年齢別に示すと55~59歳でピークを迎え、約570万円が最高であることがわかります。
※「令和4年賃金構造基本統計調査」をもとに作表
つまり病院勤務の場合、期待できる年収は多く見積もっても600万円くらいが現実的と考えられます。もちろん病院の役員になれば、年収1000万円の達成も可能ですが、実現できるのはほんの一握りでしょう。
そこで理学療法士が年収1000万円を目指すためには、副業をしたり起業したりする方法が考えられます。
以降では理学療法士が年収600万円以上や1000万円を目指す方法を解説します。
昇進や資格を取得して年収600万円以上を目指す
まずは理学療法士が現在の病院で年収600万円以上を目指す方法について解説します。
昇進を目指す
理学療法士として年収を上げるためには、現職で昇進を目指すのが最も一般的でしょう。
管理職など現在よりも上の地位につけば、役職手当がついて年収は上がります。
理学療法士として昇進するためには、理学療法の技術だけでなく従業員のマネジメント能力も必要です。日ごろからリーダーシップを発揮することを意識して、業務に取り組むとよいでしょう。
理学療法士以外の資格を取得する
理学療法士としての専門性の高さを証明する資格には、次のようなものがあります。
- 認定理学療法士:21の領域から構成され、専門性の特化した理学療法士を養成するための資格
- 専門理学療法士:13の分野から構成され、専門性を極めた理学療法士を証明するための資格
- 心臓リハビリテーション指導士:循環器疾患の治療や再発防止に向けた指導を行えるようになる資格
- 3学会合同呼吸療法認定士:呼吸理学療法や吸入療法、酸素療法といった呼吸療法の的確な実施と専門機器の管理を行える資格g
- 認知症ケア専門士:認知症ケアの現場で、他のスタッフにアドバイスや指導を行えるようになる資格
以上の民間資格を取得すると、理学療法士としての高度な技術と深い専門知識を証明できます。病院にも貢献しやすくなるため、年収アップも期待できます。
転職して年収600万円以上を目指す
病院以外の場所で理学療法士の知見を活かして、活躍するのも1つの手段です。
たとえば医療現場で使われる機材メーカーや、医薬技術を開発する企業も現在の医療を支えるうえで大きな役割を担っています。国家資格である理学療法士の知識と現場の知見を活かして、それら関連企業へ就職するのもよいでしょう。
求人数はそれほど多くありませんが、転職先の候補は多岐にわたります。他業種に転職した知り合いがいれば、どのように転職したのか、転職してからどう変わったのかなど尋ねてみてもよいでしょう。
海外で働いて年収600万円以上を目指す
理学療法士は日本だけではなく海外でも活躍できる職業です。たとえばオーストラリアやアメリカなどで働く理学療法士の年収は700万円を超え、日本よりも高いといわれています。理学療法士として海外で就労すると年収600万円以上が期待できます。
海外で理学療法士として働くためには、現地の語学を学ぶだけではなく、改めて資格を取得する必要もあります。日本理学療法士協会は、次の国で理学療法士になる方法を公開しています。
- アメリカ
- カナダ
- オーストラリア
- シンガポール
- イギリス
興味がある方はチェックしてみてください。
副業で年収1000万円を目指す方法
理学療法士におすすめの副業は次のとおりです。
- インターネット副業
- スポーツトレーナー
- セミナーの開催
- 訪問リハビリ
副業を始める前に、まずは現在勤めている病院や会社が副業を許可しているか確認しましょう。また体力や時間の都合上負担に耐えられず、現職に悪影響を与える場合は副業は控えることをおすすめします。
副業で収入を得る場合、あくまで本職は理学療法士。本業に支障が出ないよう気を付けましょう。
インターネットで副業をする
理学療法士がはじめやすいインターネット副業の1つに、Webライターがあります。Webライターは、パソコンとインターネット環境があれば気軽にスタートしやすい点が魅力です。
医療や健康、介護分野に特化すれば、理学療法士の知見を活かした専門性の高い記事を書けるため、顧客からの信頼も得やすいでしょう。
スポーツトレーナーとして個人で契約をもらう
個人契約のスポーツトレーナーとして働くのもよいでしょう。スポーツトレーナーの主な仕事内容は、選手のリハビリやケガ予防、パフォーマンス向上を目的とした指導です。
個人契約であれば、報酬を自由に決められるところもポイント。また今後独立を考えている方なら、個人で収入を得るためのよい練習にもなります。
最初のうちはなかなかクライアントが見つからないかもしれませんが、プロの選手にこだわらず地元や企業のスポーツチームに声を掛けてみるとよいでしょう。信頼関係を構築できれば、コネクションが広がって仕事を獲得できる可能性もあります。
セミナーを開催する
理学療法士の専門知識を活かしてセミナーを開催する方法もあります。最近はオンラインセミナーを活用することで、以前よりもセミナーを開催しやすくなりました。勤務時間以外にセミナーを開催すると、現職を休むことなく時間を有意義に使えます。
あわせて、現在ではセミナーの講師を探している企業も多数存在します。その他、自身でオンラインセミナーを開催したい方は、SNSでの発信や広告を使うことで、手軽に集客できるでしょう。
休みの日に訪問リハビリを行う
副業をする時間を調整しやすい点では訪問リハビリもおすすめです。訪問リハビリは、自宅で療養している患者様の元へ出向いてリハビリ指導を行います。報酬は件数や時間によって変わります。求人で細かな条件をしっかり確認するよう心がけましょう。
昨今は週1回から勤務できることもあり、比較的自由に勤務できるため副業として働けるケースもあります。本業の就業時間や自分の目指す働き方に合わせた、柔軟なワーク・ライフ・バランスが実現できます。
起業して年収1000万円を目指す
整体院やパーソナルトレーニングジムを開いて、起業すると年収1000万円以上を目指せます。
「理学療法士及び作業療法士法」において、理学療法士の開業は禁止されています。しかしそれはあくまでも保険診療の枠内の話。
整体院やパーソナルトレーニングジムを開業すれば、保険診療の枠外でサービスを提供できるため問題ありません。
また、2013年になされた「各都道府県医務主管部(局)長あて厚生労働省医政局医事課長通知」において、理学療法以外の関連業務(転倒防止の指導など)を行う場合でも、理学療法士と名乗ることが許可されました。
以上より、理学療法士として培った知識を活かしながら、自費メニューでの起業も可能です。起業した場合の平均年収は業務内容や勤務形態によっても幅が出ますが、上手く軌道に乗れば1000万円も十分目指せます。
次の記事では整体院を開業するまでの流れやポイントを紹介しているので、参考にしてください。
参考:整体院を開業する流れとは?失敗を防ぐポイントや開業資金を抑える方法を解説
理学療法士は年収1000万を稼げる
一般的な病院で働く場合、資格を取得したり、昇進したりすると600万円以上を目指せます。現在の病院で600万円以上が難しいようであれば、他業種に転職したり、海外勤務を目指したりするとよいでしょう。
そして年収1000万円を稼ぎたい場合は、副業や企業などの手段が考えられます。今回は理学療法士が年収を上げる方法を詳しく解説したので、ぜひ参考にしてください。
《参考文献》
e-Stat 政府統計の総合窓口|賃金構造基本統計調査
国税庁 | 民間給与実態統計調査
日本理学療法士協会 | 理学療法士協会の現在
CAREER PICKS | 理学療法士の平均年収は410万円!600~1,000万円も目指せる?将来性も解説
柔整スタディ | 柔道整復師&理学療法士|違いや年収・将来性・資格の難易度など
ジョブメドレー | 鍼灸師になるには? 資格の取り方や国家試験の内容、年収、仕事内容について解説
リハナビ | アメリカの理学療法とリハビリテーション
日本リハフィット協会 | 【2022年版】自費リハビリは違法なの?対策まで徹底解説