柔道整復師は、本来であれば骨折や脱臼、打撲、捻挫、挫傷などの急性症状に対応する職業です。しかし現在は、慢性症状への対応や介護での需要が高まっています。
療養費が削減されて需要が低下すると言われる反面、本来の業務以外の分野で柔道整復師としての知識と経験を活かして、活躍する方が多いのです。
そこで今回は、柔道整復師の需要拡大とその理由、将来性について解説します。
柔道整復師は飽和状態なのか?やめたほうがいいと言われる理由
整骨院や接骨院が飽和状態だったり、療養費が削減されたりしていることもあり、柔道整復師になるのはやめたほうがいいと言われた経験がある方も多いのではないでしょうか。ここでは、柔道整復師をやめたほうがいいと言われる一般的な理由を解説します。
施術所数の数が急増
柔道整復師の施術所とは、整骨院や接骨院のことをさします。これらの施術所数が急増しているため、業界は飽和状態といわれています。
※「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省」をもとに作図
以上のように平成24年から令和4年にかけて施術所数と柔道整復師の数が一貫して上昇傾向です。平成30年以降は、施術所数の増加傾向が鈍化していることからも飽和状態にあり、増加する余地がないと予想されます。
療養費の減少
厚生労働省の資料をもとに、柔道整復師が請求する療養費の推移を示すと次のとおりです。
※「柔道整復、はり・きゅう、マッサージ、治療用装具に係る療養費の推移(推計)|厚生労働省」をもとに作図
以上より、柔道整復師が請求する療養費は平成25年から令和2年にかけて一貫して減少しています。令和3年にかろうじて微増しているものの、平成25年に比べると約1000億円の減少です。
療養費の支給額が低下している背景の1つとして、柔道整復師が申請する受領委任払いの適正化が考えられます。受領委任払いで対応できる症状が以前に比べると実質的に限られる状態になったため、療養費が減少しているのです。
柔道整復師の需要が拡大する理由
柔道整復師の業界は施術所が飽和状態で、支給される療養費も減少していることから、独立開業を成功させるのは以前よりも難しくなったことは確かです。
その一方で、柔道整復師の需要は拡大するから、今後は柔道整復師の収入は上がるとの見方もあります。その理由として次の4つが考えられます。
- 柔道整復師が不足するから
- 保険を扱わない施術も提供できるから
- 機能訓練指導員として働けるから
- 信頼性が高いから
- スポーツトレーナーとしても活躍できるから
各項目について詳しく解説します。
柔道整復師が不足するから
柔道整復師の数は今後不足する可能性があります。その理由は柔道整復師の合格者数が急激に減少しているからです。柔道整復研修試験財団によると、柔道整復師の国家試験の合格者数は平成25年以降は減少傾向にあります
※「回数別 受験者数等一覧|柔道整復研修試験財団」のデータをもとに作図
さらに令和元年以降は、合格者数の減少傾向が加速して令和4年の合格者数は2,244名でした。合格者数が減少する要因の1つとして、合格率の低下が挙げられます。
以前は柔道整復師の国家試験の合格率は80%前後でした。それが令和元年以降は次のように低迷してます。
年度 | 合格率 |
第28回(令和元年度) | 64.5% |
第29回(令和2年度) | 66.0% |
第30回(令和3年度) | 62.9% |
第31回(令和4年度) | 49.6% |
※「回数別 受験者数等一覧|柔道整復研修試験財団」のデータをもとに作表
令和4年度は合格率50%を下回っているため、試験の難易度が上がっていると考えられます。今後、この傾向が続くと柔道整復師の数が減少に転じて、いずれは不足する可能性もあります。柔道整復師が不足することで、相対的に需要が拡大することも考えられるでしょう。
保険を扱わない施術も提供できるから
昨今は柔道整復師が保険を扱わずに自費施術専門で整骨院や整体院を立ち上げるケースが目立つようになりました。このようなケースが目立つ背景には、療養費の減少だけではなく、需要があることも影響しています。
整骨院で保険施術よりも高額な自費施術を提供しても、利用する顧客は一定数存在するため、自費専門の整骨院でも経営が成り立つのです。
健康意識の高い顧客層に向けて専門性をアピールすることで、保険施術に頼らなくても収入アップが可能と考えられます。
機能訓練指導員として働けるから
柔道整復師は、「機能訓練指導員」として介護施設や福祉施設でも働くことができます。デイサービスやショートステイ、特別養護老人ホームでは必ず1人は機能訓練指導員を配置しなければなりません。
近年、高齢社会になりデイサービスや特別養護老人ホームの数は増え続けています。それに伴って機能訓練指導員の需要も増加しているのが現状です。
機能訓練指導員には柔道整復師のほか、理学療法士や看護師、准看護師、作業療法士などの有資格者が就くことができます。柔道整復師は手術や病気などで筋力が低下した高齢者のリハビリを担当できるため、柔道整復師を機能訓練指導員として雇用したいという施設は多数あります。
信頼性が高いから
柔道整復師は医療系国家資格であるため、顧客からの信頼を集めやすい側面があります。
とくに運動器系の不調については専門性の高い職業の1つとして一般顧客からも認識されているため、肩こりや腰痛などの悩みについては今後も高い需要を維持できると考えられます。
スポーツトレーナーとしても活躍できるから
スポーツ選手がケガをした場合、固定や痛みの抑制、復帰の判断がとても重要です。
柔道整復師は包帯やテーピング、柔道整復術などのスキルを駆使して、打撲や捻挫、挫傷については保険を適用して対応できます。
また運動学や解剖学にも精通しているため、スポーツ選手のコンディショニングを整える役割を担える点も強みです。
一般的にスポーツトレーナーには以下のような種類が存在します。
- アスレチックトレーナー
- メディカルトレーナー
- コンディショニングトレーナー
- フィットネストレーナー
- ストレングストレーナー
各トレーナーによって必要な知識や技術も異なるため、自分が専門としている分野で活躍することができます。スポーツトレーナーに興味がある場合は、次の記事も参考にしてください。
参考:柔道整復師がスポーツトレーナーになるためには?取得しておくべき資格を含めポイント解説
柔道整復師の将来性について
柔道整復師の需要は今後も拡大することが予想されます。さらに安定した収入を得ることも可能なので、柔道整復師の将来は明るいと考えられます。
健康意識が高まり需要はさらに増加
ヘルスケア産業の市場規模について、2016年は約9.2兆円でしたが、2025人には約12.5兆円に拡大すると予想されています。(参考:経済産業省におけるヘルスケア産業政策について)
ヘルスケア産業が該当する範囲は、健康維持や増進に働きかけるサービスです。柔道整復師は主にフィジカル面の知識を活かし、ヘルスケア産業での活躍が期待されています。
また社会的な高齢化も柔道整復師の需要が予想される要因の1つです。高齢になると身体の衰えで日常生活が不便になるケースが増えます。そのような方々にとって、整骨院や接骨院で提供される自費の施術メニューは健康を維持するための有効手段の1つとなるでしょう。
今後は予防やリラクゼーションなどの自費施術を積極的に取り入れて健康需要の高まりに答えることが、柔道整復師の将来性を築くためのきっかけになるかもしれません。
安定した収入を得られる
雇われて働く柔道整体師の平均年収は300万~700万と幅があります。これは、柔道整復師は施術院以外にも病院・介護施設・スポーツ関連施設などたくさんの就職先があるためです。たとえば、新人の柔道整復師が整体院に就職した場合、平均年収は250万円前後と言われています。
しかし、整体院である程度経験を積んで介護施設に機能訓練指導員として就職する、スポーツトレーナーとして働いた後でその経験を活かして独立開業すれば、一気に年収をアップさせることも可能です。
つまり、就職先に困らず安定した収入を得られるだけでなく、努力や工夫次第で年収アップが期待できる資格といえるでしょう。
柔道整復師として生き残るための方法
柔道整復師として生き残るためには、以下の視点を持つことが大切です。
- 資格や技術を取得し続ける
- ヘルステックやDXに興味を持つ
- マーケティング思考を身につける
求められる人材になるためにも、以上を意識してみてください。
資格や技術を取得し続ける
市場価値の高い柔道整復師になるためには、資格や技術を取得し続けることが大切です。
たとえば、整骨院や接骨院、整体院に就職して、店長やエリアマネージャーなどの管理者になることで、施術の技術だけでなくマネジメント力も磨けます。
また、柔道整復師資格の他に鍼灸師の資格も取得すると、対応できる症状の範囲がさらに広がるでしょう。
このような経験や知識は、従業員として働くのみならず、独立開業する際にも役立ちます。
ヘルステックやDXに興味を持つ
現在、ヘルスケア産業の分野ではヘルステックやDXが推進されています。ヘルステックとはHealth(健康)とTech(テック)を組み合わせた言葉で、医療とテクノロジーを融合して健康に関する新たなソリューションを生み出す取り組みです。
たとえば、弊社で扱う「リハサク」はクラウド上で顧客の健康管理ができたり、動画でアフターフォローを提供できたりします。テクノロジーをフル活用した医療サービスによって、顧客の悩みに寄り添える点が特徴です。
またDXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル技術を活用して業務プロセスを改善することです。
たとえば電子カルテやインターネットの予約管理システムなどは整骨院経営に取り入れられるDXの1つといえます。リハサクにも電子カルテや院内共有メモなどのDX関連の機能が実装されているため、業務プロセスを効率化できます。
以上のようなヘルステックやDXに興味を持つことで、世の中のトレンドに合ったサービス提供が可能になるため、独立開業後の集客が有利になるでしょう。
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マーケティング思考を身につける
柔道整復師として今後活躍するためには、マーケティング思考を身に着けることが大切です。マーケティング思考とは、顧客の立場を考えて行動したりサービスを提供したりすることです。
このような考え方は日ごろの業務でも身に着けられます。たとえばカウンセリングの際には顧客の悩みを傾聴して、顧客が求めていることを考えるとマーケティング思考を鍛えられます。
顧客が「腰が痛い」という悩みを相談に来たら、単にその場限りで腰痛を取るのではなく、日常生活の質の低下を招いている原因の解消に努めることが大切です。日常生活の状況について詳しく話を聴いて、顧客に寄り添いながら施術すると顧客ニーズに深く寄り添うことになり、満足度が高まるのです。
マーケティング思考を付けて需要のある柔道整復師を目指しましょう。
柔道整復師の需要は拡大傾向で将来性も明るい!
今回は、柔道整復師の需要が拡大を続ける理由や将来性について解説しました。
今後もヘルスケア産業の市場規模は拡大すると予想されているため、それとともに柔道整復師の需要も拡大を続けるでしょう。
従来通りにスキルや知識の獲得に努めることも重要ですが、ヘルステックやDX、マーケティング思考などのこれまでになかった新しいことに興味を持つことも大切です。
顧客から求められる柔道整復師になることを目指して、日々の業務に取り組んでみてください。
<参照元>