【調査背景】
ICTの普及は、業務の効率化や最適な医療を提供するツールとしてとても期待されている。一方で「高齢者が使うには、ICT機器の操作方法を理解したり、操作手順を覚えるといった点で難しいのでは?」という声を聞く機会も多い。
そこで我々は、『リハサクを活用した年代別の特徴』について調査を行い、60代以上の利用者の利用率が最も高かったことを示した。
調査の結果、リハサクは、幅広い年代に利用されていることが分かった。次の疑問として、専門家の方々から「田舎では使われないよね?」という声を耳にすることもある。ICTの利用は、生産年齢人口比率の高い地域(いわゆる都会)で多いと言われているため、このような印象をもつ方もいることは、たしかに想像できる。
では実際に、リハサクの活用に地域差はあるのか。 この課題を明らかにすることで、ICTを利用することに対する懸念やためらいを減らすこと、およびリハサクを効果的に活用するためのヒントになり得るかもしれない。
そこで本調査では、リハサクを導入している施設を対象とし、施設の所在地域とリハサクの配信数について調査したので、以下に報告する。
【調査方法】
調査期間は、2020年1月1日~2020年10月31日までの10か月間とした。
対象は、リハサクに登録されている施設の住所をもとに、政令指定都市+東京都の施設および政令指定都市以外の施設の2群に分けた。
リハサクの利用については、施設ごとに配信したエクササイズの配信数を抽出し比較検討した。
【調査結果】
政令指定都市+東京都に所在する施設は67施設、政令指定都市以外に所在する施設は107施設であった。
政令指定都市+東京都の配信数は28.8±69.6回であり、政令指定都市以外は37.9±67.9回であった。リハサクの配信数については、2群間で有意な差を認めなかった(図1)。
このことから、リハサクの利用は、施設の所在地域によって差があるとはいえないことが分かった。
※本調査では、事前に正規性の検定を実施し、両データともに正規分布に従わないことを確認している。しかし今回は、分かりやすさを加味し棒グラフで示している。ノンパラメトリック検定の結果について詳細を知りたい方は、リハサクの担当者まで連絡をいただきたい。
【分析者からユーザー様へのコメント】
本調査において、エクササイズの配信数は、政令指定都市+東京都よりも、むしろ政令指定都市以外の地域で多く配信されていることが分かった。日本全国のICT利用率は、2018年から2019年の1年間で約10.0%も増加しており、都市部以外の地域において著しく増加していた1,2)。リハサクを利用する際に、地域性の懸念が頭に浮かぶこともあるが、むしろ、専門家の方々のサービスを地域性に関係なく、幅広く届けることが可能であることも示された。
一方で、エクササイズの配信数は、施設が所在している地域に関係なく、大きくバラついていることが明らかとなった。専門家の方々にとって、時間の制約上、リハサクの説明とエクササイズの指導を両立させることが容易ではない、と感じることもあるかもしれない。
リハサクでは、このような専門家の方々に対して、操作方法が分からない時に簡易的に相談することができるチャット機能や、より良い活用方法をディスカッションする活用コミュニティなどを通じてサポートしている。
今後も専門家の声を反映しながらより良いサービスを提供していきたい。
【参考資料】
1) 総務省|令和2年版 情報通信白書|情報通信機器の保有状況
(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd252110.html)
2) 総務省|令和元年版 情報通信白書|情報通信機器の保有状況
(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd232110.html)
執筆者
内野翔太 理学療法士
(認定理学療法士(スポーツ理学療法))
【所属】
医療法人社団鎮誠会 季美の森整形外科 リハビリテーション科
【経歴】
- 平成22年3月 帝京大学福岡医療技術学部 理学療法学科卒業(理学療法士免許取得)
- 平成22年4月 医療法人社団鎮誠会 入職
- 平成30年3月 千葉大学大学院人文社会科学研究科地域文化形成専攻 地域スポーツ教育学分野 修了(学術修士)
【研究分野】
膝関節(ACL損傷予防)、スポーツバイオメカニクス