リハサクを活用した年代別の特徴

【調査背景】

インターネットの利用率は、幅広い年代で増加している1)。また、ICT(Information and Communication Technology)を活用したシステムやサービスも年々普及している。医療分野では、業務の効率化を図ることや適切な医療を提供することを目的とし、ICTの利活用が進んでいる。

他方で、年齢ごとにその活用に至るまでのプロセスは異なる。例えば、高齢者は慣れていない場合も多いことは想像に難くない。

リハサクは、ICTを活用したリハビリ支援サービスであり、幅広い年代の方々がリハサクの対象者となる。リハサクをより効果的に活用するためには、対象者の年代ごとに特徴を捉え、対策を練ることが重要である。

そこで本調査では、まずリハサクの活用方法や利用者の特徴について年代別に検討することとした。

【調査概要】

対象は、リハサクを導入している施設でエクササイズの処方を受け、痛みを記録した初日から90日以上疼痛が継続している10代から70代までの241名とした。対象データにおいて、重複して抽出された対象者のデータは1名分としてカウントした。またデータの記録がない場合は対象から除外した。

本調査では、対象となる利用者を10代、20~39歳、40~59歳、60~79歳の4つの年代に分けた。分析方法は、リハサクより抽出できる下記7項目について、年代間の比較をするため一元配置分散分析および多重比較法を用いた。

ログイン率 ログイン日数/利用期間
運動記録率 エクササイズを記録した日数/利用期間
年齢 リハサク利用時の年齢
利用期間 痛みを記録した初日から90日以上経過している痛みの経過日で最も日付が早い日付
初回エクササイズ処方数 痛みを記録した初日の直前に送信された運動メニュー数
累計エクササイズ処方数 計測期間が終了する日付までに送信された運動メニュー数の合計
初回NRS

(Numerical Rating Scale)

記録開始した初日の痛みを11段階で評価

0:まったく痛みがない

10:今まで経験したことがない痛み

「統計方法の説明」

・分散分析とは

分散分析は、3群以上を比較する際に用いられるため、2群間の比較の際に用いられるt検定とは異なる。また、分散(ばらつき)を使って平均値の有意差を検定する統計手法である。対象となる変数が正規分布の場合は、一元配置分散分析や二元配置分散分析を用いる。正規分布でない場合は、Kruskal wallis testを用いる。分散分析は、結果が有意であったとしても、どの群間に差があるかまでは分からない。そこで、多重比較法を用いることで群間の差を調べることができる。多重比較法は、多数の手法が考案されているので、目的に合わせて手法を選択し分析に用いる。

【調査結果】

調査対象は、除外基準に該当しなかった147名であった。各年代ごとの対象数は、10代が21名、20~39歳が36名、40~59歳が70名、60歳~79歳が20名であった。

リハサクより抽出された7項目は、すべて正規性が認められなかったため、Kruskal wallis testを用いて分散分析を行った。その結果、ログイン率、運動記録率、利用期間の3項目においてそれぞれ有意な差を認めた。多重比較法の結果は、各項目ごとに示す。

[ログイン率]

ログイン率は20~39歳(0.27±0.29)が最も低く、次に10代(0.44±0.30)、40~59歳(0.47±0.31)、60~79歳(0.67±0.32)の順に高かった。

多重比較法の結果は、20~39歳と40~59歳および20~39歳と60~79歳の間で有意な差を認めた(図1)。

図1. 年代別ログイン率(**: p<0.01)

[運動記録率]

運動記録率は、20~39歳(0.21±0.28)が最も低く、次に10代(0.34±0.30)、40~59歳(0.37±0.32)、60~79歳(0.61±0.37)の順に高かった。

多重比較法の結果は、20~39歳と40~59歳および20~39歳と60~79歳の間で有意な差を認めた(図2)。

図2.年代別運動記録率(**: p<0.01)

[利用期間]

利用期間は、60~79歳(93.65±6.35日)が最も短く、40~59歳(107.16±38.84日)、10代(114.24±39.05日)、20~39歳(121.64±44.24日)の順に利用期間が長かった。

多重比較法の結果は、20~39歳と40~59歳および20~39歳と60~79歳の間で有意な差を認めた(図3)。

図3.年代別利用期間(**:p<0.01)

【分析者からユーザー様へのコメント】

本調査では、ログイン率、運動記録率、利用期間の3項目において年代別の特徴が示された。例えば、20~39歳の年代は、ログイン率が60歳以上の年代よりも低いことが明らかとなった。この年代は、仕事や家事、育児などに費やす時間も多く、日々の生活のなかでリハサクを積極的に活用することが困難である方も少なくない。そのため、専門家の方々は、利用者が短時間で実施できるエクササイズや場所を限定せずに実施できるエクササイズなど、利用者の生活様式に配慮することが必要となる。

その上で、リハサクは500種類以上のエクササイズを選択できるツールであり、活用方法によって、上記のような年齢の対象者がエクササイズを実施するきっかけを作る土台を備えている。様々な要因を加味しながら、リハサクの効率的な活用法を知ることで、より幅広い対象者のICT活用を実現できるだろう。

【参考資料】

  • 令和2年版情報通信白書

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/r02.html

執筆者

内野翔太 理学療法士
(認定理学療法士(スポーツ理学療法))

【所属】
医療法人社団鎮誠会 季美の森整形外科 リハビリテーション科

【経歴】
平成22年3月 帝京大学福岡医療技術学部 理学療法学科卒業(理学療法士免許取得)
平成22年4月 医療法人社団鎮誠会 入職
平成30年3月 千葉大学大学院人文社会科学研究科地域文化形成専攻 地域スポーツ教育学分野 修了(学術修士)【研究分野】
膝関節(ACL損傷予防)、スポーツバイオメカニクス

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