【調査背景】
エクササイズは、専門家の施術と組み合わせることで、症状の改善に効果的であることから、その重要性が注目されている1,2)。しかし、痛みを有する方の中には、『身体を動かすとさらに痛くなるかもしれない』といった理由から、途中でエクササイズをやめてしまう方も少なくない。そのため、専門家の方々は、どのようにエクササイズを継続し、症状の改善につなげるか工夫が求められる。加えて、効果的な治療を進めるためには、専門家の方々と対象者が症状の変化を共有し、治療方針を一緒に決定することも重要である。
リハサクは、エビデンスに基づく運動メニューを提案し、専門家の方々から対象者へエクササイズを効率的に提供するのみならず、利用者が自身の痛みの変化やエクササイズの実施状況について日々記録することができる。記録することは、治療に対して利用者が積極的に参加するきっかけとなり、症状の改善に繋がる可能性がある。
そこで本調査では、リハサクから抽出できる痛みのデータを基にリハサク利用者の痛みの変化について調査したので、以下に報告する。
【調査方法】
対象者は、リハサクの利用開始から90日以上が経過した利用者とした。痛みの評価は、Numeric Rating Scale(以下NRS)を用いて行い、リハサク利用初回のNRSが1以上の利用者を対象とした。
本調査では、まずリハサクの利用を開始した初回記録時とリハサク併用後のNRSの最大値(NRS max)を抽出し、その変化について検証した。次に身体8部位※ごとのNRSの値を抽出し、各部位ごとに初回とリハサク併用後のNRSの変化について検証した。(頚部、肩関節、肘関節、手関節、腰部、股関節、膝関節、足部の8部位)
分析方法は、対応のあるt検定を用いた。
【調査結果】
調査対象は、247名(男性115名、女性132名)であった。
対象者のNRS maxは、初回5.1±2.4、リハサク併用後3.6±2.5であり、NRS maxが有意に低下していた(図1)。また、各部位ごとのNRSの変化は、股関節以外の7部位においてリハサク併用後のNRSが有意に低下していた(図2,3)。
図1.初回NRS maxとリハサク併用後のNRS maxの変化
図2.リハサク利用開始(初回)と併用後のNRSの変化
【分析者からユーザー様へのコメント】
本調査では、リハサクを使用することで、対象者のNRS maxおよび各部位ごとのNRSが低下していたことが確認できた。このことから、専門家の方々の施術にリハサクを組み合わせると、痛みが改善することが明らかとなった。
リハサクは動画やLINEを用いてエクササイズを分かりやすく提供することができる。しかし、リハサクの特徴はそれだけではない。リハサクの利用者が痛みについて日々記録することで、痛みの度合いが大きく変化した際に、すぐに専門家の方々へ通知が送られる。そのため、専門家の方々は、利用者が記録した情報を基に治療の効果を確認することができ、症状の変化にも速やかに対応することができる。
これまで利用者の中には、痛みを有しているため治療に対しても消極的な方もいる。しかし、実際に記録された情報を共有し、一緒に治療の方向性を考えることで、利用者の治療に対する意識が変わるかもしれない。利用者の積極的な治療への参加は、治療効果を高めるための鍵となる。そのため、専門家の方々には、リハサクを利用者とのコミュニケーションツールとしても活用してもらいたい。
また、リハサクでは、活用方法に関するコメントや利用者の反応などを専門家の方々と共有するコミュニティを定期的に開催している。リハサクと専門家の方々が意見を交わしやすいこともリハサクの特徴の1つである。
【参考文献】
1)Schäfer AGM, et al. The Efficacy of Electronic Health-Supported Home Exercise Interventions for Patients With Osteoarthritis of the Knee: Systematic Review. J Med Internet Res 20(4):e152, 2018.
2)Chen H, et al. The effects of a home-based exercise intervention on elderly patients with knee osteoarthritis: a quasi-experimental study. BMC Musculoskelet Disord. Apr 9;20(1):160, 2019.
執筆者
内野翔太 理学療法士
(認定理学療法士(スポーツ理学療法))
【所属】
医療法人社団鎮誠会 季美の森整形外科 リハビリテーション科
【経歴】
- 平成22年3月 帝京大学福岡医療技術学部 理学療法学科卒業(理学療法士免許取得)
- 平成22年4月 医療法人社団鎮誠会 入職
- 平成30年3月 千葉大学大学院人文社会科学研究科地域文化形成専攻 地域スポーツ教育学分野 修了(学術修士)
【研究分野】
膝関節(ACL損傷予防)、スポーツバイオメカニクス