【この記事は、こんな方におすすめ!】
・各施設で作成した運動メニューをどのように活用していいか悩んでいる方
・患者がどれくらい運動を行っているか知りたい方
・リハサクの効果的な活用方法を知りたい方
【調査のポイント】
・患者は、セラピストが提供した運動メニューをどれくらい実施しているか調査しました
・リハサクの運動メニューは、運動を行うときの姿勢や負荷量を細かく設定しているため、多くの患者に提供されています
・各施設で作成した運動メニューは、リハサクの運動メニューと組み合わせて使うとより効率的に活用できます
【調査背景】
リハサクは、セラピストが患者の症状にあった運動メニューを選び、患者に対して効率的に運動を促すことができます。その他にも、リハサクの特徴の1つに、各施設で独自に作成した運動メニュー(以下、オリジナルメニュー)を提供できる機能があります。このオリジナルメニューは、すでにリハサクが用意してた運動メニュー(以下、リハサクメニュー)と組み合わせて、患者に提供することもできます。
セラピストは、これらの機能を活用し、運動メニューを提供することに加えて、患者が運動を続けられるようにサポートすることも求められます。運動を継続して行うためには、1人ではなく、誰かと一緒に運動を行うことも効果的です1,2。そういった点において、オリジナルメニューには、普段から治療を担当しているセラピストが映っているため、患者も安心して運動に取り組むことができるかもしれません。
それでは、オリジナルメニューとリハサクメニューでは、どちらの方が実施されているのでしょうか?
本調査では、オリジナルメニューとリハサクメニューの記録日数と提供数をもとに、運動メニューの実施状況について検証しました。
【調査結果】
[記録された日数ごとにみた運動メニューの提供数]
図1は、患者が記録した日数ごとに提供された運動メニューの数を示しています。結果は、1日だけ記録された運動メニューの数が最も多く、オリジナルメニュー509件、リハサクメニュー667件でした。運動メニューの提供数の合計は、オリジナルメニュー2,476件、リハサクメニュー3,122件でした。
図1.記録日数ごとにみた運動メニューの提供数
[オリジナルメニューとリハサクメニューの実施状況について]
運動メニューの提供数だけでは、オリジナルメニューとリハサクメニューがどれくらい実施されているか、比較することができません。また、運動メニューの中には、複数の患者に提供されることもあります。このように、同じ運動メニューが重複して提供されている場合には、延べ数として示すことで比較できるようになります。
本調査では、運動メニューの提供数と記録日数を掛けて、メニュー延べ記録数と定義しました。
メニュー延べ記録数は、オリジナルメニュー574.0±266.6(日×件)、リハサクメニュー760.4±278.8(日×件)となり、有意な差を認めました(図2)。
図2.メニュー延べ記録数
【分析者からユーザーへのコメント】
本調査より、運動メニューの実施状況は、オリジナルメニューよりもリハサクメニューの方が実施されていることが明らかとなりました。
リハサクメニューは、様々な症状の患者に対して、効率的に活用できるように、姿勢や使用する道具を細かく分けています。その数は、約700種類にも及びます。豊富なリハサクメニューは、セラピストが運動メニューを選択しやすいだけではなく、患者にとっても実施しやすい運動メニューが揃っています。
一方で、オリジナルメニューは、各施設の“こだわり”を活かした、独自の運動メニューを患者に提供できます。
リハサクは、セラピストが患者に対して、効率的に運動を促すことができるように、このような機能を備えています。是非、リハサクメニューとオリジナルメニューを使い分けて活用してみてください。
【参考文献】
1.Ríos D, Cubedo M, Ríos M. Graphical study of reasons for engagement in physical activity in European Union. SpringerPlus. 2013;2(1):488. doi:10.1186/2193-1801-2-488
2.Wienke B, Jekauc D. A Qualitative Analysis of Emotional Facilitators in Exercise. Front Psychol. 2016;7. doi:10.3389/fpsyg.2016.01296
【調査方法】
[調査期間]
2020年6月11日から2021年6月10日
[対象期間]
運動メニューが提供された日から28日間
[対象施設]
オリジナルメニューを多く作成している5施設
[本調査で用いた各変数の算出方法]
図3は、セラピストから患者へ提供された運動メニュー数の算出方法を示しています。患者Aには、3件の運動メニューが提供され、患者Bには4件の運動メニューが提供されています。この場合、患者Aと患者Bの間で、運動メニュー1と運動メニュー2が重複して提供されています。この場合、提供された運動メニューの数は7件とカウントします。
図3.ユーザーが利用者へ提供した運動メニュー数のカウント方法
次に、運動メニューごとに患者が記録した日数のカウント方法について説明します。図4のように運動メニューによって記録された日数が異なります。そのため、記録された日数ごとに運動メニューの数をカウントしました。
本調査では、対象期間が28日間であるため、記録日数は1日から最大28日となります。
図4.利用者が記録した運動メニューの記録日数のカウント方法
本調査では、運動メニューの記録日数と提供された運動メニューの数を掛け合わせて算出した値をメニュー延べ記録数と定義しました。
例えば、表1のように記録日数が1日であった運動メニューが300件あった場合、メニュー延べ記録数は300となります。
表1.メニュー延べ記録数の算出例
運動メニューの記録日数 | 運動メニュー数(件) | メニュー延べ記録数 |
1日 | 300 | 300 |
2日 | 250 | 500 |
… | … | … |
28日 | 100 | 2800 |
[解析方法]
本調査では、オリジナルメニューとリハサクメニューのメニュー延べ記録数の差を比較するために、対応のないt検定を用いました。
執筆者
内野翔太 理学療法士
(認定理学療法士(スポーツ理学療法))
【所属】
医療法人社団鎮誠会 季美の森整形外科 リハビリテーション科
【経歴】
平成22年3月 帝京大学福岡医療技術学部 理学療法学科卒業(理学療法士免許取得)
平成22年4月 医療法人社団鎮誠会 入職
平成30年3月 千葉大学大学院人文社会科学研究科地域文化形成専攻 地域スポーツ教育学分野 修了(学術修士)
令和3年4月 横浜市立大学大学院データサイエンス研究科 博士後期課程 データサイエンス専攻
【研究分野】
ACL損傷予防、医療ビッグデータ、データサイエンス