【調査背景】
一般的にエクササイズの指導は、口頭のみで指導する機会が多く、対象者がエクササイズの方法を忘れてしまうことや、正確なエクササイズを行えず、運動を継続できていないといった課題がある。一方で動画を用いたエクササイズ指導は、対象者が繰り返し内容を確認できることや、視覚的にも運動方法が理解しやすい為、運動継続の効果が期待できる。
新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛の影響から、自宅においてエクササイズを行う人たちが急増しているという。実際に、動画配信サイトでのエクササイズ動画の平均視聴回数は、2020年1月1日~3月14日の期間と比べて、3月15日~5月31日の期間では、4.5倍に増加している1)。
エクササイズ動画への需要が高まる一方で、専門家は、限られた治療時間の中で、対象者の症状・身体機能に適した動画を探し、エクササイズの指導を行うことが困難な場合も多い。さらに、現状ではエクササイズの実施状況について、リアルタイムでの情報収集ができないことがほとんどである。
このような課題に対して、リハサクでは、専門家が対象者の症状・身体機能に適したエクササイズを短時間で提供することや、エクササイズの実施記録をリアルタイムでチェックができる機能がある。これらの機能を活用することで、治療効果を高めるサポートができるのではないかと考えている。
そこで本調査では、リハサクの利用者を年代ごとに分けて、利用開始から4週間のエクササイズ実施記録数とエクササイズ動画の視聴者数について調査したので、以下に報告する。
【調査方法】
調査対象は、リハサクへ初回登録を行った時より28日以上利用している、10代から70代までの男女とした。
調査期間は、対象者がリハサクへアクセスした初日から28日間とした。
本調査では、エクササイズの実施を記録した人数、および、動画を視聴した人数を週ごとに抽出した。その後、年代ごとに1週目の人数を基準として2週目、3週目、4週目の人数の割合を算出した。
【調査結果】
本調査の対象者は、リハサクを28日以上利用している10代から70代までの1025名(男性435名、女性590名)であった。
図1は、1週目のエクササイズ実施者数を100%としたとき、週ごとのエクササイズの実施を記録した対象者の割合を表している。対象者の割合は、2週目、3週目、4週目と全年代において高い水準であったことが明らかとなった。
図1.エクササイズの実施を記録した対象者の割合
(1週目の人数に対する週ごとの人数から算出)
次に、図2では、1週目のエクササイズ動画視聴者数を100%としたとき、週ごとのエクササイズ動画視聴者の割合を表している。リハサクの動画を視聴しながらエクササイズを実施した対象者は、50代~70代の利用者において、高い割合を示していた。特に70代の利用者は、継続してリハサクの動画を視聴していることが明らかとなった。
図2.動画を視聴した対象者の割合
(1週目の人数に対する週ごとの人数から算出)
【分析者からユーザーへのコメント】
本調査において、エクササイズの実施記録は、どの年代においても4週目まで高い水準を維持していることが示された。また、60代に関しては、1週目より2週目の実施人数が増えていた。これは2週目の来院時に専門家が再度操作方法や運動の重要性を伝える事により実施人数が増えたのではないかと考えられる。実際に利用しているユーザーからも、普段スマホを利用する機会の少ない対象者には操作方法を説明する事で利用頻度が増えるといった声を聞く事がある。
一方で、エクササイズの動画視聴は、若年者より50代~70代の方が継続して閲覧している傾向が示された。特に70代の対象者は、4週目でも46%の方が視聴しており、年代ごとの特徴が明らかとなった。
エクササイズを指導する際に動画を用いることで、利用者が自宅においてもエクササイズを継続して実施しやすくなる2)と言った先行研究があり、リハサクの動画を用いた運動指導は、運動の継続を促す有効な手段になると考えられる。
また、エクササイズの記録は、利用者の症状を把握するだけでなく、エクササイズを変更するタイミングを見極める上でも貴重な情報である。専門家には、エクササイズの内容や難易度を調整する際に、リアルタイムで反映される利用者の実施記録をうまく活用し、より良い運動処方を行っていただきたい。
【参考資料】
1) 月間 6,500 万ユーザーを超えた YouTube、2020 年の国内利用実態
─テレビでの利用も 2 倍に
https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/video/youtube-recap2020-2/
2)Emmerson KB, et al. Providing exercise instructions using multimedia may improve adherence but not patient outcome: a systematic review and meta-analysis. Clinical Rehabilitation 33(4): 607-618, 2019.
執筆者
内野翔太 理学療法士
(認定理学療法士(スポーツ理学療法))
【所属】
医療法人社団鎮誠会 季美の森整形外科 リハビリテーション科
【経歴】
- 平成22年3月 帝京大学福岡医療技術学部 理学療法学科卒業(理学療法士免許取得)
- 平成22年4月 医療法人社団鎮誠会 入職
- 平成30年3月 千葉大学大学院人文社会科学研究科地域文化形成専攻 地域スポーツ教育学分野 修了(学術修士)
【研究分野】
膝関節(ACL損傷予防)、スポーツバイオメカニクス