【背景】
臨床では、複数の部位に痛みが発生している状況、例えば「腰と肩」「膝と股関節」というような組み合わせを比較的多く経験するだろう。そのような場合、治療に必要な対象部位が多くなったり、施術時間も長くなったりすることから、経験とともにエビデンスも踏まえた効率的な介入が求められることもある。
しかし、そもそも、どの部位とどの部位が組み合わさって痛みが発生しているか、実は明らかになっていない。経験的な知見から、”隣接した関節が影響を受けやすい”と考えているが、その仮説も検証されていない背景がある。
セラピストが痛みの組み合わせを知ることで、治療方法を標準化できる手がかりになるなど、エクササイズを指導する際の重要な情報となり得る。
今回我々は、リハサク利用者が初回に記録した痛みの部位を集計し、痛みの部位数とその組み合わせについて調査したため、以下に報告する。
【調査対象】
調査対象は、リハサクを利用し90日以上が経過しており、リハサクの利用を開始する際に痛みを有していた247名(男性115名、女性132名)とした。
痛みに関する情報は、リハサクより抽出することができる初回NRS(Numeric Rating Scale)のデータを基に、痛みの部位数とその組み合わせについて集計した。
対象となる部位は身体8部位※とした。
(※頚部、肩関節、肘関節、手関節、腰部、股関節、膝関節、足部の8部位)
痛みの部位数は、1部位と複数の部位の2つに分けて調査した。
痛みが1部位の場合は、部位ごとに対象者の数を集計した。
複数の部位に痛みを有する場合は、まず対象者ごとに、痛みの部位を2部位ずつの組み合わせとし全て抽出した。次に、抽出した組み合わせに応じて対象者の数を集計した。
【調査結果】
1部位のみに痛みを有した利用者は139名(56%)であり、複数の部位に痛みを有していた利用者は108名(44%)であった。
痛みの部位が2つ以上ある場合は、「頚部と肩関節」の組み合わせが最も多く、次いで「頚部と腰部」、「肩関節と腰部」の順であった。本調査では、この他にも痛みを有する2部位の組み合わせを確認することができた(図1, 2)。
図1.部位の組み合わせと対象者数
図2.上位5つの組み合わせと対象者数
【分析者からユーザー様へのコメント】
本調査により、複数の部位で痛みを有している対象者は44%であることが分かった。また、その組み合わせの特徴として、「頚部と肩関節」のように隣接する部位の組み合わせだけでなく、「腰部と肩関節」のように離れた部位の組み合わせも改めて確認することができた。
治療の対象となる組み合わせ次第では、診療報酬の体系上、時間を効率的に使い、実施することができる施術やエクササイズを選択する必要性に迫られる。そのため、専門家は工夫して、施術内容を決定する。
その工夫は多岐にわたるものの、効率化をより支援する意味で、リハサクを活用することが可能である。リハサクは、”症状別に”エビデンスに基づいたエクササイズをパッケージ化しており、症状に合わせたメニューの立案からエクササイズの処方まで短時間で行うことができる。これにより、専門家は介入やエクササイズの指導において、痛みの部位が複数であっても効率的に実施することが可能となる。
執筆者
内野翔太 理学療法士
(認定理学療法士(スポーツ理学療法))
【所属】
医療法人社団鎮誠会 季美の森整形外科 リハビリテーション科
【経歴】
平成22年3月 帝京大学福岡医療技術学部 理学療法学科卒業(理学療法士免許取得)
平成22年4月 医療法人社団鎮誠会 入職
平成30年3月 千葉大学大学院人文社会科学研究科地域文化形成専攻 地域スポーツ教育学分野 修了(学術修士)【研究分野】
膝関節(ACL損傷予防)、スポーツバイオメカニクス