【この記事はこんな方におすすめ!】
- 腰痛に対する運動プログラムを、自信を持って作成したい方
- 全国の治療家・療法士が、腰痛に対してどのような運動プログラムを作成しているのかを知りたい方
【調査のポイント】
- リハサクの運動プログラムのパッケージでは、腰痛に関するパッケージの利用頻度が多く、その内容の一部を変更して処方されることが多い
- 初期設定の運動プログラムには含まれず、追加された運動メニューはストレッチが多かった
- 一方で、初期設定に含まれる筋力トレーニングは削除されることが多く、筋力トレーニングが十分に行われていない可能性がある
- 痛みが強い場合、筋力トレーニングに消極的な場合などは、運動強度を下げたり、ストレッチから導入し徐々に筋力トレーニングを加えたりするなどの対応が必要かもしれない
【調査背景】
腰痛は、2019年の国民生活基礎調査において、男性では1番目、女性では肩こりに次いで2番目に多い症状であり1)、たくさんの人々が腰痛に悩まされています。
前回の調査(リハサクを用いた効率的な運動プログラムの作成方法は?〜運動処方の状況調査からわかったこと〜)でも、利用数が多い上位10個の運動プログラムのパッケージ(以下、パッケージ)の中に、腰痛に関するものが5個も含まれていました。
リハサクでは、腰椎に関連する様々な症状に合わせて11個のパッケージを有しており、対象者の症状に合わせて最適な運動プログラムを簡単に選択することできます。また、初期設定に含まれる運動の種類や難易度の変更も簡単に可能です。
そこで、本調査は腰痛に関するパッケージの利用状況と課題を明らかにし、腰痛の運動プログラムを作成する時の参考資料を提供することを目的としました。
【調査結果】
[パッケージの利用状況]
18,770件の運動プログラム処方が調査対象となりました。処方数上位10個のパッケージの中に、腰痛に関連するパッケージは5個含まれており、約6割は何らかの変更が加えられた上で処方されていました(表1)。
表1.処方数トップ10内に入っている腰痛に関するパッケージの利用状況
順位 | 症状 | パッケージ名 | 総処
方数 |
内容の
変更数 |
内容の
変更率 |
1 | 長時間の同一姿勢で痛みがでる | 長時間同じ姿勢・動作を行うことで痛みが出る | 398 | 254 | 64% |
2 | 体を前屈(屈む)すると痛い | 夕方や仕事後に痛みがある | 288 | 112 | 39% |
3 | 体を後屈(反る)すると痛い | 強制的に反らせると痛みがある | 223 | 155 | 70% |
4 | 体を前屈(屈む)すると痛い | 起床時やくしゃみの時に痛みがある | 206 | 132 | 64% |
6 | 起床時に痛みがでる | 起床時やくしゃみの時に痛みがある | 175 | 119 | 68% |
順位は処方数トップ10のパッケージの中での順位を示しています
[パッケージ内の運動メニューの利用状況]
パッケージに含まれる初期設定の運動メニューの中で、ストレッチや自動運動に該当するメニューはそのまま利用されていることが多かったです。一方、筋力トレーニング(以下、筋トレ)は変更・削除される傾向がありました。
変更・追加された運動メニューはストレッチであることが多く、難易度は1または2であり、その種類は5〜32種類でした。図1〜5にパッケージごとの運動メニューの利用状況を示しました。
図1
図2
図3
図4
図5
【分析者からユーザーへのコメント】
本調査により、リハサクのパッケージを用いた腰痛に関する運動プログラムのうち、約6割が何らかの調整が加えられて処方されていることが明らかになりました。変更・追加されたメニューの種類は豊富であり、対象者の特性に合わせた運動プログラム作成が行われていることが読み取れました。一方で、初期設定に含まれる筋トレは変更・削除される傾向があり、筋トレが十分に行われていない可能性がありました。
腰痛を含む慢性の痛みに対しては、ストレッチだけではなく筋トレも組み合わせて運動を行うことが推奨されています。2)よって、ストレッチと筋トレの両方を組み合わせることで、より効果的な介入が可能になると考えられます。
筋トレに消極的、もしくは初期に痛みが強い対象者には、トレーニングの難易度を下げる、初期はストレッチのみから開始し、徐々に筋トレを追加するなどの対応が必要かもしれません。
リハサクのパッケージは、エビデンスに基づきながらストレッチや筋トレ、バランス練習などを組み合わせて作成されており、内容を変更しなくても十分な効果が期待できます。また、図のように「関連した運動に変更する」をクリックすると、変更したい運動メニューと同じ効果が見込める他の運動メニューを提案してくれます。
このように、リハサクでは対象者の症状や特性に合わせて、運動プログラムの内容を簡単に調整することが可能です。腰痛に関する運動プログラム作成にパッケージと、運動メニューの調整機能を有効活用してみてください。
【参考文献】
1) 厚生労働省:2019年 国民生活基礎調査の概況.2019年(URL:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html、2021年4月閲覧)
2) Geneen LJ, et al. Physical activity and exercise for chronic pain in adults: an overview of Cochrane Reviews. Cochrane Database Syst Rev. 2017;1(1):CD011279.
【調査方法】
調査期間:
2020年5月18日〜2020年3月31日
調査対象:
リハサクのパッケージを利用して処方された全ての運動プログラムの中で、処方数上位10個のパッケージに含まれる、腰痛に関するパッケージ
調査項目:
- 総処方数
- パッケージ内容の変更率
- パッケージの初期設定に含まれる各運動メニューの処方率*1
- パッケージの初期設定に含まれず変更または追加された各運動メニューの種類とその処方率*2
- 全運動メニューの難易度
解析方法:
- パッケージ変更のあり・なし:内容の一部でも変更が加わっている場合に、変更されていると判定
- 初期設定の運動メニューの利用状況:処方率が、60%以下の場合に「よく変更・削除されるメニュー」と判定
- 初期設定に含まれず変更・追加された運動メニューの利用状況:処方率が2%以上の運動メニューのみ抜粋し掲載
執筆者
岩倉正浩 理学療法士
(認定理学療法士(呼吸・介護予防))
【所属】
独立行政法人 市立秋田総合病院 リハビリテーション科
【経歴】
平成26年3月 秋田大学医学部保健学科 理学療法学専攻卒業(理学療法士免許取得)
平成26年4月 独立行政法人 市立秋田総合病院 入職
平成30年3月 秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻 博士後期課程 修了(保健学博士)
【研究分野】
呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患)、呼吸リハビリテーション