患者教育介入の無作為化対照試験

近年では痛みと心理的な要素との関連が強いということから多くのガイドラインでは疼痛特に腰痛に対しては患者教育が推奨されています。筆者はオーストラリアの臨床系大学院を卒業しましたが、その中の治療演習の授業では問診と患者への説明(教育)に多くの時間を割くことに驚きました。

最近発表された質の高い研究(RCT)では急性期の標準的な治療に加えて、患者教育を行う群とプラセボの教育(情報提供はせずアクティブリスニングのみ)を行う群で効果を比較しました(Koes 2010)。結果として、プラセボ群と3ヶ月後の痛みの程度において有意な差はありませんでした。またdisabilityに関しては介入1週間と3ヶ月で少ない効果を認めましたが、6ヶ月及び12ヶ月では両群に差はありませんでした。このことから2時間(1時間✖️2セッション)にわたる患者教育は話を聞くだけのプラセボ群と効果の違いはなく有用性は実証されませんでした。

患者教育の内容

ここで患者教育の内容をみてみましょう。

患者教育は著書”Explain pain”(Butler 2013)を参考に以下の3つから構成されています。

1)腰痛に関する適切ではない考えを修正する

2)生物学的そして防御的な腰痛の性質についての情報提供

3)腰痛の回復を促すためのコンセプトや方法論を評価する

今回の研究では”腰痛に永遠に苦しむのではないかと心配している”や”腰にダメージがあるため仕事をすることができない”など患者自身の状況を把握し、それぞれ個別的に介入を行っています。臨床的印象でも、痛みを有する患者は治りが悪い人ほど、動くのを怖がっている印象が多く、その理由の大部分として動けば体へのダメージが強くなると信じています。それにより疼痛→不活動→疼痛という負のサイクルから抜け出せず慢性化してしまいます。そのため、疼痛に対する適切な情報提供や身体活動を促すような患者教育は重要だと感じています。

患者教育の今後の課題

しかし、今回の研究ではプラセボ群との有意な差はありませんでした。この患者教育というアプローチはここ数年で注目され、痛みの治療や管理において重要な要素の一つとなっていました。そのため多くの臨床家でこの研究が話題にされ議論も巻き起こっています。筆者の意見としては、この患者教育というのは方法論が確立されていなく、患者の認知への働きかけのため実際に狙っている教育がされたのかが非常に判断しにくいところでもあります。いかなる治療法においても言えることですが、その方法のしっかりとした定義及びその介入を評価するために十分な妥当性が担保されたツール(例えば筋力トレーニングという介入の効果を評価するためのBiodex)を確立させることが重要でないかと感じています。

 

KoesBW,vanTulderM,LinCW,MacedoLG, McAuley J, Maher C. An updated overview of clinical guidelines for the management of non-specific low back pain in primary care. Eur Spine J. 2010;19(12):2075-2094. doi:10.1007 /s00586-010-1502-y

ButlerDS,MoseleyGL.ExplainPain.2nded. Adelaide, South Australia: Noigroup Publications; 2013