”骨盤がずれてますね、今からそのずれを直してみますね” こんな言葉をよく耳にします。果たして骨盤は本当にずれるのでしょうか?そして骨盤のズレと痛みの関係はどのようなものでしょうか?

骨盤のずれは数ミリ程度

特殊な装置を使って、骨盤の動きを調べた研究は昔から行われています。結果として、骨盤のずれというのは数ミリ程度、ねじれは数度以下というのがわかりました(1-3)。骨盤の関節を仙腸関節と言いますが、この周りにはとても強靭な靭帯がたくさんあるため、このような小さい動きしかでないのでしょう。

人の手によって骨盤のずれを特定できるか?

次に出てくる疑問が、このような小さい仙腸関節の動きを果たして医療従事者の手によって判断できるのかということです。医療従事者が患者さんをベットにのせ、触診によって骨盤の位置を測る方法があります。その方法がどのくらい信頼性があるかを調べた研究があります。その結果、その手法は信頼性に乏しいということがわかりました。詳しく言えば、あるAという治療家が骨盤がずれてると判断しても、他のBの治療家はずれていないと言ってしまう確率が高いということです(4,5)

骨盤矯正のカラクリは?

世の中には骨盤を矯正させる治療法や、器具はたくさんあります。そもそも骨盤の動きが限りなく小さく、それを人の手によって測る手法が存在しない”骨盤”を修正する意味があるのでしょうか?言い換えれば骨盤は何らかの手法によってずれが修正されるのでしょうか?骨盤を早い動きによって修正するテクニックがあります。以下の動画参照https://www.youtube.com/watch?v=__aywZHufiA

骨盤に痛みを訴える患者さんに対して、この動画のテクニックを用いてどのように骨盤の位置が変化するかを調べた研究があります(6)。施術を行う前後を特殊な装置を使って調べたところ、骨盤の位置の変化はみられませんでした。しかし、同時に患者さんの痛みは軽減していました。つまり、この治療によって痛みが改善するのは骨盤の位置が修正されたからというよりは周りの筋肉が緩んだり、心理的な作用(プラセボ効果)など他の原因によるところが大きいと言えます。

まとめ

骨盤がずれるということは科学的に証明されていません。強靭な靭帯で固定されている関節のため、世の中にたくさんある骨盤を修正する治療法も、おそらく骨盤のずれは修正できないと考えられます。

 

(1)Vleeming A, Van Wingerden Jp Fau – Dijkstra PF, Dijkstra Pf Fau – Stoeckart R, Stoeckart R Fau – Snijders CJ, Snijders Cj Fau – Stijnen T, Stijnen T. Mobility in the sacroiliac joints in the elderly: a kinematic and radiological study. (0268-0033 (Print)).

(2)Jacob HA, Kissling RO. The mobility of the sacroiliac joints in healthy volunteers between 20 and 50 years of age. (1879-1271 (Electronic)).

(3)Sturesson B, Uden A, Vleeming A. A radiostereometric analysis of movements of the sacroiliac joints during the standing hip flexion test. Spine (Phila Pa 1976). 2000;25(3):364-368.

(4)Robinson HS, Brox JI, Robinson R, Bjelland E, Solem S, Telje T. The reliability of selected motion- and pain provocation tests for the sacroiliac joint. Man Ther. 2007;12(1):72-79.

(5)Holmgren U, Waling K. InterUexaminer reliability of four static palpation tests used for assessing pelvic dysfunction. Man Ther 2007

(6)Tullberg T, Blomberg S, Branth B, et al. Manipulation does not alter the position of the sacroiliac joint. A roentgen stereophotogrammetric analysis. Spine 1998;23:1124U8; discussion 9